会長賞候補 3 
川崎病血管炎におけるリンパ管新生因子VEGF-Dの関与
千葉大学小児病態学1),東京女子医科大学八千代医療センター小児科2),国立成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部3)
江畑亮太1),安川久美1),浜田洋通2),東 浩二1),遠山貴子1),本田隆文2),阿部 淳3),寺井 勝2)
【背景,目的】vascular endothelial cell growth factor(VEGF)-Dは近年同定された血管内皮細胞増殖因子の一つで,血管新生作用とともにリンパ管新生作用を有し炎症修復に関与していると考えられている.われわれは小児の炎症性疾患の一つである川崎病(以下KD)におけるVEGF-Dの発現およびその意義について検討した.【方法,結果】KD患者におけるγグロブリン治療(以下IVGG)前後の血清VEGF-D値をELISA法にて測定した.VEGF-DはIVGG直後に有意な上昇(p < 0.0001)を認めた.さらにIVGG直後のVEGF-D値を冠動脈瘤合併の有無で検討すると,瘤合併例では正常例に比べて有意に低かった(p = 0.012).次にKD患者におけるVEGF-D産生細胞の同定を試みた.急性期KD患者剖検心筋組織では,免疫組織染色法にて冠動脈血管内皮細胞および平滑筋細胞,リンパ管内皮細胞,心筋,浸潤マクロファージにVEGF-D蛋白の発現を認めた.KD患者末梢血中では,単球,単核球のVEGF-D mRNAの発現レベルはIVGG前後ともに極めて低かった.一方,培養ヒト血管内皮細胞では,川崎病患者単球に比べて多くのVEGF-D mRNAの発現を認めた.また,KD患者剖検心筋組織において免疫組織染色法でリンパ管を同定しその断面積を検討した.急性期では遠隔期に比べリンパ管新生を示唆するリンパ管拡張を認めた.【結語】川崎病では急性期治療直後に血中VEGF-Dが上昇する.その産生源の一つは血管内皮であることが示唆された.また,急性期KD患者心筋組織ではリンパ管新生を示唆する所見を認め,VEGF-Dは川崎病血管炎の炎症修復に関与している可能性がある.


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