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I-S3-3 |
早産児の脳室内出血の予防をめざした循環管理 |
神奈川県立こども医療センター新生児科
豊島 勝昭,川滝 元良 |
超低出生体重児(ELBW)の脳室内出血(IVH)は生命予後,神経学的予後にかかわる合併症である.生後早期の低血圧と虚血後再灌流がIVHの成因とされ,NICU循環管理では昇圧・強心治療が主流である.われわれは収縮末期左室壁応力(ESWS)と心拍補正左室平均円周短縮速度(mVcfc)からなるstress-velocity関係(SVR)の経時的変化を検討し,血圧上昇時に「後負荷上昇に伴う心ポンプ不全」を来した児にIVHが多いことを報告した.「後負荷不整合によるうっ血」がIVHの成因の一つであり,減負荷治療がIVH予防につながる可能性を報告した.SVRを基に後負荷が低い状態の心ポンプ不全はカテコラミンによる強心治療,後負荷過剰状態の心ポンプ不全は血管拡張薬による減負荷療法の適応とする循環管理に変更した.また,後負荷上昇と脳血流変動の原因になるバルサルバ反応の予防に塩酸モルヒネ持続静注を原則とした.この循環管理を施行したELBW 107名の生存退院は96%,重症IVHは1.9%であり短期予後は良好であった.IVHのリスクが高い在胎25週未満のELBWにおいて循環管理の変更前後の治療状況や18カ月時の予後の変化を調べた.ドブタミン使用は81%から18%に減少,血管拡張薬使用は37%から48%に増加した.重症IVHは22%から 4%に減少(p < 0.05),18カ月生存は74%から88%に改善(p = 0.16),発達指数は65.6±22.9から76.4±21.9に改善(p = 0.13)した.SVRを指標として循環作動薬を選択・調節した結果,カテコラミンの使用頻度・投与量とIVHは減少した.血圧値に加えて心エコー指標を基に循環管理することは早産児の生命予後と神経学的予後を改善する可能性がある. |
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