I-B-5
TCPC術後のγ-GTP上昇についての検討
京都府立医科大学大学院医学研究科小児循環器・腎臓病学
加藤竜一,糸井利幸,浜岡建城

【はじめに】TCPC術後に血行動態が破綻すると,慢性肝障害から肝硬変を来すことが知られている.TCPC術後の長期予後を検討する目的で,今回われわれは肝胆道系障害を鋭敏に示すγ-GTPに注目して検討を行った.【症例】2003年 5 月~2008年 1 月に当院でTCPC術後カテーテル検査を施行した延べ32例(年齢:4.5±3.8歳,TCPC術後期間:24.3±22.6カ月)で,いずれも臨床上フォンタン循環は良好である.比較対照としたのは,BCPS術後24例(年齢:1.7±1.1歳)(今回検討したTCPC術後症例と同一),2 心室修復術後延べ129例(年齢:6.0±7.1歳),川崎病既往延べ61例(年齢:7.8±5.6歳).血液検査結果はカテーテル検査実施日とほぼ同時期のものを用いて検討した.【結果】TCPC術後のγ-GTPは72.0±56.7IU/lと高値であった.またカテーテル検査にてIVC圧は13.0±2.7mmHg,平均PA圧は12.1±2.9mmHgであった.(1)TCPC術前との比較:TCPC術前のγ-GTPは16.0±5.5IU/l,IVC圧は6.5±2.5mmHgであった.(2)2 心室修復術後との比較:2 心室修復術後のγ-GTPは20.6±19.7 IU/l,IVC圧は6.6±2.6mmHgであった.(3)抗血小板薬・抗凝固薬の影響について:川崎病既往のある症例においてγ-GTPは10.6±3.3IU/lであった.【考察】TCPC術後のγ-GTP上昇は,手術侵襲や薬剤の影響というよりも,むしろIVC圧上昇が起因している可能性がある.良好なフォンタン循環であっても,長期的にみれば慢性肝障害や胆汁うっ滞を生じ得るため,注意深い観察が必要であると思われた.

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