I-B-23
無脾症候群の単心室におけるフォンタン手術に到達できない原因
福岡市立こども病院循環器科1),新生児循環器科2),心臓血管外科3)
中村 真1),石川司朗1),千田礼子1),中右弘一1),安田和志1),石川友一1),牛ノ濱大也1),佐川浩一1),総崎直樹2),角 秀秋3)

【背景・目的】当院では,1980年から2007年12月末までに855例の機能的単心室を経験し,そのうち203例が無脾症候群であり,81例(40%)がフォンタン(F)術非到達例であった.その臨床経過を後方視的に検討し,F術非到達の原因を調べ,安定したF循環確保に向けての治療戦略について考案すること.【対象・方法】F術非到達81例で非到達の原因を調べた.【結果】F術非到達81例中,死亡73例(90%),ドロップアウト 5 例(6.2%),生存 3 例(3.8%)であった.73例の死亡原因は,心室機能不全19例(26%),肺静脈閉塞18例(25%),感染症 8 例(11%),突然死 6 例(8.2%),不整脈 4 例(5.5%),BT shunt閉塞 4 例(5.5%)等であった.心室機能不全19例では,房室弁閉鎖不全関連が 7 例(未手術 3 例,房室弁修復術 1 回;2 例,房室弁修復術 2 回;2 例),BT shunt後の肺血流増加で体血圧低下が 4 例などが理由であった.肺静脈閉塞18例では,17例にTAPVCを合併(TAPVC修復術;13例,未手術;4 例)し,1 例にPV stent留置を行っていた.感染症 8 例では,敗血症 3 例(肺炎球菌 1 例),髄膜炎 2 例(肺炎球菌 2 例),インフルエンザA型 1 例等が原因であった.不整脈 4 例では,VTが 1 例,PSVT + VTが 1 例,術直後の難治性JETが 1 例,難治性ATが 1 例であった.生存 3 例は,肺静脈狭窄(TAPVC術後)が 2 例,左肺動脈絞扼術後の左肺動脈閉塞が 1 例であった.【考案】安定したF循環の獲得には心室機能温存が大切で,外科的に房室弁形成の工夫,的確な体肺短絡路径の選択が,内科的にはβ遮断薬,ACE阻害薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB),利尿薬による早期からの積極的な心筋保護療法導入が必要と考える.不整脈対策も発症後の薬物治療・非薬物治療には限界があり,心筋保護療法による不整脈器質の獲得回避を考えねばならない.一方,肺静脈閉塞は外科治療面のみでは回避できない解剖学的問題もあり,極めて難解な課題と言わざるを得ない.

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