I-B-33
プロスタグランジンE1製剤の副作用と考えられるCRP上昇症例の検討
高知医療センター小児科1),岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児科2),岡山大学病院心臓血管外科3)
片岡功一1),山本浩継1),大月審一2),岡本吉生2),大野直幹2),日置里織2),山内 泉2),堀川定儀2),森島恒雄2),佐野俊二3),笠原真悟3)

【背景】プロスタグランジンE1(PGE1)は発熱,頻脈,下痢,無呼吸,骨膜肥厚,多毛など副作用を高率に発現する.CRP上昇は感染症と鑑別を要し,手術適応上重要な副作用だが報告は少ない.【目的】1998年 1 月~2006年12月に当施設でPGE1を投与した動脈管依存性先天性心疾患384例中,1mg/dl以上のCRP上昇を来し,術後PGE1投与中止に伴い正常化した 3 症例につき検討すること.【症例 1】critical PS.日齢 0 からlipo PGE1製剤(L剤)を 5~10ng/kg/分で投与.CRP 0.5~1.0mg/dlの軽度陽性が続き抗生剤投与で陰性化しなかった.sepsis work-upを行ったが感染所見はなく,日齢23に肺動脈弁形成術およびB-T shunt術(BTS)を施行し術後CRPは陰性化した.【症例 2】PA/VSD,MAPCAs.日齢 4 から他院でL剤を 5~10ng/kg/分で投与され,日齢25に転院し手術待機.日齢38からCRPが陽性化し抗生剤は無効で徐々に上昇した.L剤13.5ng/kg/分まで増量したが低酸素血症が進み,日齢68にPGE1-CD製剤(CD剤)100ng/kg/分投与に変更した際CRPは7.8mg/dlであった.以後もCRP上昇は続きsepsis work-upをくり返したが感染所見はなく,日齢76 CRP 14.1mg/dlでBTSを施行し術後CRPは陰性化した.【症例 3】supero-inferior ventricle,PA,TAPVC,bilateral SVC.日齢20,他院から紹介され,低酸素血症が著明で人工呼吸管理下にCD剤を100ng/kg/分で投与開始し200ng/kg/分まで増量.CRPが陽性化したが抗生剤は無効で最高10.2mg/dlに上昇した.sepsis work-upを繰り返したが感染所見はなく,以後CRPは 5~6mg/dlで推移し抗生剤中止後も悪化しなかった.日齢47,BTSおよび肺動脈拡大術を施行し術後CRPは陰性化した.【考察と結論】PGE1の副作用発現率は投与量や投与期間に依存するとの報告があり,CRPが上昇した自験例でも投与量が多く投与期間も長い傾向がみられた.PGE1投与中のCRP上昇では,感染症を慎重に除外し手術時機を失さぬよう留意すべきと考えられた.

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