I-B-36
新生児心疾患患者におけるトラセミドの使用経験
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
赤塚淳弥,先崎秀明,岩本洋一,石戸博隆,小林俊樹,竹田津未生,増谷 聡,伊藤志乃,鈴木孝明,加藤木利行

【背景】新しく開発されたループ利尿剤であるトラセミドは,抗アルドステロン効果も併せ持ち,心不全治療に有益であることが成人領域で示されてきている.さらにわれわれは,小児心疾患においてもトラセミドが有用かつ安全に使用できることを報告してきた.しかしながら,新生児に関するトラセミド使用の報告は少ない.今回われわれは,新生児心疾患におけるトラセミドの使用経験について報告する.【方法】2000年 1 月から2007年 4 月まで当科に外来受診および入院した生後 4 週未満の新生児心疾患患者のうちトラセミドを投与された計71例(術前および手術不要,不可症例31例,術後投与40例)において投与前後の 1 日平均尿量の変化,血液データ,有害事象について後方視的に検討した.【結果】投与開始の日齢は 3~26日(中央値8.1日)で開始投与量は,0.4/kg分 2(19例)または0.6mg/kg分 3(40例)であった.投与開始前の 1 日平均尿量は50.2±16.3mlから,投与後24時間(58.8±19.3ml),さらに48時間(76.2±20.3ml)で有意に増加した(おのおの p < 0.05).この間,静注フロセミド投与を併用された症例においては,投与後でフロセミド必要量は有意に低下した(p < 0.05).血清カリウム,尿酸値は前後で有意な変化はなかったがナトリウム値は有意に低下した(140±3.8 vs 138±3.2).血中BNP値を前後で測定したものでは,BNPは投与後有意に低下を示した(692±321 vs 452±213).トラセミド投与が明らかに関連したと思われるアレルギー症状,下痢,嘔吐,不機嫌,低血圧等の副作用は認められなかった.【考察】トラセミドは利尿剤一般に認められる副作用に留意すれば,新生児心疾患においても安全に利尿効果を期待できる有用な薬剤であることが示唆された.今後,利尿作用,K保持性,神経液性因子への影響,有害事象につき,経口フロセミドとの比較検討を行い本薬剤の新生児心疾患管理におけるさらなる有用性について検討したい.

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