I-E-31
Fontan患者における心室血管整合関係と心肺運動機能の検討
九州大学病院小児科1),九州厚生年金病院小児科2),心臓血管外科3)
宗内 淳1),城尾邦隆2),渡辺まみ江2),山村健一郎2),森鼻栄治2),大野拓郎2),井本 浩3),瀬瀬 顯3)

【目的】Fontan患者は心拍出量低下,心拍応答不良,拘束型肺機能障害等により運動機能が劣ることが知られる.心機能評価の指標とされる収縮期末期容積エラスタンス(Ees)と後負荷総量の指標とされる動脈実効エラスタンス(Ea)の比で表される心室血管整合関係(Ees/Ea)についてFontan患者における心肺運動機能との関連を検討する.【対象】1993~2001年にFontan型手術(TCPC)へ到達した36例(TCPC施行平均年齢:6.3±3.3歳,男/女 = 20/16,全例NYHA心機能分類I~II度)を対象とした.【方法】TCPC後平均5.8±2.2年(12.3±4.3歳)にトレッドミル中の呼気ガス分析による心肺運動機能検査と心臓カテーテル検査を同時期に行った.最大酸素摂取量(peak VO2/kg),心拍増加数(ΔHR),安静時酸素飽和度(SaO2),心係数(CI),肺動脈圧(PAP),肺血管抵抗(Rp),PA index,Ees/Eaについて,各因子間の相関分析を行い,さらにpeak VO2/kgについて体重,性を加えた各因子との関連を重回帰分析で検討した.【結果】peak VO2/kg 32.8±6.9ml/分/kg,ΔHR 60±19bpm,SaO2 94±2%,CI 4.3±1.3l/分/m2,PAP 10±2mmHg,Rp 1.3±0.6RUI,PA index 252±81cm2/m2,Ees/Ea 1.46±0.65(平均値±標準偏差)であった.CIとEes/Eaは強く相関し(p < 0.01),peak VO2/kgとΔHR,CIとPA index,PAPとRpの間にも有意な相関がみられた(p < 0.05).他の因子間には相関はみられなかった.peak VO2/kgに関する重回帰分析では体重(p < 0.05)とΔHR(p < 0.01)が有意に関連していた.【結論】心肺運動機能の指標としてpeak VO2/kgとΔHRは関連していたがEes/Eaは関連がなかった.運動能は呼吸循環動態を調節するさまざまな因子に左右され閉鎖回路としての循環パラメータだけでは決定されない.Fontan患者では循環パラメータは経年的に変化しないと考えられており,呼吸機能や筋肉ポンプの鍛錬が必要となる.

閉じる