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剖検で初めて左冠動脈右バルサルバ洞起始症が明らかになった,突然死の 1 男児例
済生会宇都宮病院小児科
高橋 努,小島 拓朗,井原 正博

【はじめに】冠動脈起始異常は全先天性心疾患児の0.25~0.5%である.多くは無症状で予後良好とされるが,心筋虚血や突然死を生じた報告が蓄積されつつある.心肺停止で救急搬送され死亡確認された後に,剖検で左冠動脈右バルサルバ洞起始症が明らかになった男児を経験したので報告する.【症例】11歳男児.今まで学校心臓検診で異常を指摘されたことはなかった.14時ごろ,友達と走り回って遊んでいたところ,1 回嘔吐し保健室まで歩いて行ったが,顔面蒼白,口唇チアノーゼを認め臥位にされた.先生が一時離れ,14時17分に戻ってくると意識がなく救急要請した.保健室内でAED装着,心肺蘇生が開始され,DC 2 回作動.14時28分に救急隊到着.意識レベルJCS300,脈拍触知せず,瞳孔は両側 3mmで対光反射なし.心電図モニターでVFを認めた.蘇生処置が継続され,14時47分の病院到着までにもDC 4 回作動した.病院到着時もVF認め,DC,心臓マッサージ,気管内挿管を行った.気管内から血性分泌物が多量に吸引された.エピネフリン投与,心臓マッサージ,DCを繰り返したがasystoleとなり,15時43分に死亡確認.【解剖結果】左冠動脈が右バルサルバ洞から起始し,肺動脈と大動脈の間を走行.【考察】特記すべき既往歴,家族歴はなし.小学校 4 年の学校心臓検診の心電図でも異常なかった.冠動脈起始異常は偶然発見されることが多いが,運動中に虚血性心事故を起こし得る型があり注意を要する.臨床的に認識するのは容易ではなく,狭心痛を訴える若年者では本症も考慮すべきである.また今回はAEDが初期より装着され心電図波形がすべて記録されており,院外での蘇生の様子が確認できた.個々の症例について再評価でき,バイスタンダーとの相互協力に有用なシステムと思われた.解剖結果の情報を提供していただいた獨協医科大学法医学教室黒須明先生に深謝いたします.

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