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心室中隔欠損を有する肺動脈弁閉鎖に合併し,右肺動脈に開口部を有した左冠動脈肺動脈起始症冠動脈再建例
昭和大学横浜市北部病院循環器センター1),こどもセンター2)
黒子 洋介1),石野 幸三1),西岡 貴弘2),澤田 まどか2),松岡 孝2),伊藤 篤志1),山邊 陽子1),曽我 恭司2),富田 英1),上村 茂1)

【背景】左冠動脈肺動脈起始症(ALCAPA)はまれな疾患であり,同症では通常左冠動脈は主肺動脈より起始する.今回,心室中隔欠損を伴う肺動脈弁閉鎖の特異な形態に合併し,左冠動脈が右肺動脈より起始し複雑な走行を示したALCAPA例の冠動脈再建術を経験したので報告する.【症例】在胎33週,1,188g,帝王切開にて出生.生後早期からlipo PGE1投与を開始した.三尖弁・右室が小さく,肺動脈弁は膜性閉鎖で大きな心室中隔欠損を合併していた.生後48日に右肺動脈への修正BT短絡術および肺動脈弁裂開術(Brock手術)を行った.生後 3 カ月時バルーン肺動脈弁拡大術施行.生後 5 カ月時,右室流出路形成術前の心エコー検査で右冠動脈の拡張が確認された.選択的右冠動脈造影では無数の交通を有した左冠動脈が造影され,開口部付近は細い血管径となって肺動脈に接合していた.検査当初,主肺動脈の末梢側付近に開口していると診断した.Tc-99m-PPNによる心筋シンチでは前壁の虚血が疑われた.翌日,右室流出路形成術および左冠動脈起始異常に対し手術施行.左冠動脈口は主肺動脈にはなく右肺動脈近位側に開口していた.左冠動脈は開口部から細い径を呈し,大動脈外壁に沿って大動脈基部へ達し,同部から内径も正常の通常の走行を呈していた.冠動脈が大動脈に沿って走行する近位部で大動脈壁に孔をあけ,冠動脈へ楔状に切り込み,動脈血が流れるように形成した.右室流出路は一弁付きパッチにて形成した.術後の心電図は,再度V4~V6でST低下を認めるようになった.術後27日目の冠動脈造影では左冠動脈の開口部は良好であり,主幹部は太く造影されたが前下行枝および回旋枝全体がやや低形成であった.【結語】本症は複雑な症例ではあるが,術式の工夫により開口部の良好な開存が得られていると思われる.

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