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心内修復術を施行した心室中隔欠損・肺高血圧を伴ったダウン症候群症例の検討—手術の施行時期,術後経過
北海道大学病院小児科1),循環器外科2)
上野 倫彦1),村上 智明1),古川 卓朗1),八鍬 聡1),武田 充人1),橘 剛2),村下 十志文2)

【背景・目的】ダウン症候群患児に左右短絡性心疾患を併発した場合手術時期の決定が非常に困難である.新生児期より高肺血管抵抗が持続することがある一方でいったん肺血管抵抗が低下し高肺血流量になると肺血管閉塞性病変の進行が早いため手術時期を急がなければいけないためである.当院では,大きな心室中隔欠損を有するダウン症候群患児では出生後より細かな経過観察を続け肺血流増加のタイミングで手術を考慮する方針としている.今回症例を後方視的に検討しこの治療管理方針について検証した.【対象】当院および関連施設で管理され2000年以降当院で心内修復術を施行した心室中隔欠損症・肺高血圧を伴うダウン症候群16例.【結果】対象症例の手術時期は9.8±10.1カ月(平均±標準偏差)だった.10症例は生後 6 カ月前に肺血流増加所見を認め手術を行ったが,6 症例は生後 6 カ月以降に肺血流増加と判断したため,術前に心臓カテーテル検査を施行した.心臓カテーテル検査施行時期は生後17.7(7.9~35.4)カ月であり,肺体血流比は1.9(1.3~2.6),肺血管抵抗は5.1(3.3~7.0)U・m2であった.術後は16例中13例が翌日までに抜管可能で,最長でも挿管期間は 3 日間(気道出血のため)でありPH crisisを起こした例はなかった.術後入院期間は17.9±7.7日で,退院前の心エコー検査にて推定右室圧は40.6±10.6mmHgであり,退院後肺血管拡張薬や在宅酸素療法を要した症例はなかった.全例術後遠隔の経過は良好である.【まとめ】肺高血圧を伴う心室中隔欠損をもつダウン症候群症例では,肺血管抵抗が低下しはじめた時期に手術を行うことが円滑な術後経過のために重要でり,その時期を逃さないために細かな経過観察が必要である.

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