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Fontan型手術対象となったDown症候群の検討
静岡県立こども病院循環器科1),心臓血管外科2)
増本 健一1),北村 則子1),早田 航1),古田 千左子1),金 成海1),満下 紀恵1),新居 正基1),田中 靖彦1),小野 安生1),坂本 喜三郎2)

【背景】Down症候群に伴う先天性心疾患において,まれにFontan型修復を適用すべき症例に遭遇することがあるが,特有の肺高血圧や呼吸器症状,術後胸水などを考慮し段階的治療を慎重に構築する必要がある.【目的】当院では,Down症候群に対し極力 2 心室治療をめざす方針だが,一側心室成分低形成,弁形態異常が強いためFontan trackとした 2 例を経験したので報告する.【症例 1】7 歳男児,三尖弁閉鎖(共通房室弁の右側成分膜様閉鎖),肺高血圧のため,肺動脈絞扼術(1 カ月),両方向性Glenn術(5 カ月),TCPC術(1 歳 6 カ月)を行った.Glenn術後,低酸素血症のためNO吸入療法を19日間施行,肺血管抵抗軽減のため在宅酸素を併用し52日後退院.術後10カ月の心カテーテル検査では平均肺動脈圧 = 10mmHg,Qp/Qs = 0.6,Rp = 2.1U・m2であり,16mm心外導管によるTCPC術施行.次第にSpO2は改善し術後 1 年で在宅酸素療法を中止.術後 4 年の心カテーテル検査でRp値の上昇を認めず,比較的良好な経過である.【症例 2】1 歳男児,房室中隔欠損,ファロー四徴症,肺高血圧で共通房室弁の左側成分低形成(71%N,mural leaflet低形成,弁尖開放不良かつ逆流中等度)のため,両方向性Glenn術および弁形成術(1 歳)を行った.Glenn術前の平均肺動脈圧 = 21mmHg,Qp/Qs = 2.43,Rp = 1.4U・m2であった.術後乳び胸が遷延し治療に難渋.胸腔ドレーン留置17日,最終的に酢酸オクトレオチドを投与し乳び胸は改善,68日後退院.術後経過は比較的良好であり,現在TCPC術待機中である.【考察】Down症候群に対するGlenn術後において特有の合併症のため治療に難渋したが,肺高血圧に対する在宅酸素療法,術後乳び胸に対する長期間の治療により状態は改善した.Down症候群でもFontan型手術は適応になると思われるが,慎重かつ積極的な治療が必要と考えられた.

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