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地方小児病院における三心房心の臨床像
長野県立こども病院心臓血管外科
西野 貴子,木村 光裕,豊田 泰幸,打田 俊司,原田 順和

三心房心は先天性心疾患の0.1%の発生頻度で,日常の臨床で経験することはまれであるため,乳児検診などで見逃されることが多い.当院では1993年の開院以来15年間,地域(人口220万)の先天性心疾患のほぼ100%を診断治療してきたが,現在までに 4 例の三心房心を経験し,心内修復術を行った.その臨床像を検討する.【症例】症例 1:1 カ月検診で体重増加不良を指摘,TAPVCの診断で当院に紹介.三心房心Lucas Schmidt IIAと診断,翌日準緊急手術を行った.症例 2:乳児検診で異常を指摘されたことはなく,母親が哺乳低下に気付き,地域総合病院受診し,チアノーゼを指摘され三心房心と診断.当院で三心房心Lucas Schmidt IAと診断し,翌日準緊急手術を行った.症例 3:4 カ月時の検診で体重増加不良を指摘,地域総合病院受診.TAPVC疑いで当院を紹介受診したが,三心房心Lucas Schmidt IAと診断,3 日後準緊急手術を行った.症例 4:乳児検診で異常を指摘されたことはない.地域総合病院でTAPVCの疑いで当院に搬送.三心房心Lucas Shmidt IAと診断.チアノーゼ,重篤な心不全呼吸不全を呈し,同日緊急手術を行った.【手術】中等度低体温完全体外循環下,大動脈遮断を行い,卵円窩,右側左房,左心耳から左房内の異常隔壁を確認し,これを切除した.左房圧,肺動脈圧をモニターし体外循環から離脱,適宜NOガス,PD III阻害剤を使用した.【術後経過】体外循環から離脱時Pp/Psは0.3~1.0であったが速やかに正常化し,1~6 日の人工呼吸管理後,人工呼吸器から離脱可能であった.手術死亡,遠隔死亡ともない.【考察】自験例では,新生児期,乳児期の検診で見逃されることが多く,診断された時点で緊急手術を行わなくてはならないことが大部分であった.手術成績は良好で,術直後の肺高血圧症は術後経過中に速やかに正常化した.三心房心は,地域総合病院と小児病院との連携で,診断,治療を行えば,良好な成績が得られる疾患である.

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