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超音波イメージングによる再生血管評価法の開発
東京女子医科大学心臓血管外科1),産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門2),エール大学心臓血管外科3)
松村 剛毅1),新田 尚隆2),吉岡 朋子1),山根 隆志2),新岡 俊治3),黒澤 博身1)

【背景・目的】これまで生分解性素材による再生血管の作成を行ってきたが,その評価方法には従来の検査方法(CT,MRI,カテーテル検査など)のみであり,形態学的診断やマノメトリーは可能であった.しかしながら,再生組織の再生度の評価や生力学的特性に関しては侵襲的・犠牲を伴う動物実験においては可能であるものの,人・臨床応用時においては不可能に近いのが現状である.そこで,これらの評価を行い得るシステムの開発を行い,さらなる評価方法の開発を行うのが本研究の目的である.【方法】体重約 9kgのビーグル犬の下大静脈にパッチ状ないし導管の生分解性素材を移植する.1,3,6,12カ月時において透視下に超音波カテーテル(2.4Fr)および圧力カテーテル(2.0Fr)を挿入した.再生血管の歪みを超音波カテーテルにより計測,さらに圧力センサ(Millar)にて下大静脈圧を測定し,得られた圧‐歪み曲線の勾配により再生血管の弾性率を推定した.同一固体の再生血管および正常静脈部位の弾性率をそれぞれ測定した.経時的変化に伴う力学的再生度は,正常血管と再生血管の弾性率の差の変化により判断することとした.【結果・結語】生分解性素材の吸収・分解にしたがい力学的再生度は増し,約 1 年で正常組織とほぼ同等の値を示した.すなわち,移植後の弾性率の測定は本法により可能であり,また組織学的再生度の推定にも使用可能であると考えられる.さらに動物を犠牲死させることなく生力学的データの収集を可能とし,素材の開発研究において一役を担うものと考えられる.観血的ではあるものの臨床応用も十二分に応用可能であり,本法の測定時間の短縮を図れれば有用な検査方法となり得ると思われる.謝辞:本研究は,文部科学省 科学技術振興調整費(重要課題解決型研究の推進プログラム)の一部において行われた.

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