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心内膜線維化(EFE:endocardial fibroelastosis)を合併した重度大動脈弁狭窄症(critical AS)に対する治療経験
静岡県立こども病院心臓血管外科1),循環器科2)
廣瀬 圭一1),藤本 欣史1),大崎 真樹1),中田 朋宏1),登坂 有子1),井出 雄二郎1),城麻 衣子1),中田 雅之1),早田 航2),小野 安生2),坂本 喜三郎1)

【背景】EFEを伴ったcritical AS症例の治療は非常に困難で,報告は限られる.現在も治療中の症例経過を報告する.【症例】(初回手術までの経過)現在 5 カ月の男児.近医にて42週正常分娩で出生,心雑音およびチアノーゼのため当院搬送.心エコーからcritical ASの診断でbaloon angioplasty 2 回施行も,EFE・心不全が進行.最終エコー:拡張期LVPW 124%,Dd 83%,心内膜厚4.8mm.〈初回手術,3.2kg〉生後16日目Ross-Konno手術施行.A弁は内径で6.5mm,P弁は10mm.RVOTには 1 弁付き12mmのePTFEグラフトを使用.いったんECCより離脱するも,血行動態不安定のためECMO装着で帰室.POD 6 ECMO離脱,POD 11 閉胸.術直後PHや心内膜線維化・肥厚は軽度.POD 40呼吸器より離脱するも,4 日後再挿管,以降人工呼吸管理.心内膜肥厚に伴う拡張障害・PHが進行.最終エコー:over systemic PHでLVPW 142%,Dd 86%,MR 2度.〈2 回目手術,5.4kg〉生後90日目,EFE切除術施行.LAおよび大動脈よりLV内のEFEを可及的に切除.術直後のPHおよび拡張能はかなり改善,MR 1 度.POD 4 閉胸.徐々にMR増加,それにつれて拡張障害およびPH増悪.原因はEFE切除による僧帽弁後尖のdimension変化によるものと考えられた.最終エコー:MR 3 度,systemic PH.〈3 回目手術,3.8kg〉生後115日目,僧帽弁置換術.僧帽弁後尖に付く乳頭筋もEFE化しており,形成は困難と判断.弁輪は13mm,やや心房側にずらして弁置換(ATS16mm).POD 2 閉胸も,術中培養よりpseudomonas,POD 6 に前縦隔炎を発症し,6 日間の開胸下洗浄を行い,軽快した.その後,血行動態は安定し全身状態改善,経腸栄養に移行もPHが残存し,人工呼吸器からの離脱に難渋している.【結語・考察】非常にまれな治療抵抗性の進行性EFEを伴ったcritical AS症例を経験した.EFE合併ASでは十分な 2 心室があってもDKS型流出路形成を伴う単心室型治療戦略のほうがよい選択肢となり得る症例があると考えられた.

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