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ファロー四徴症とPAIVSにおける大動脈基部拡張の比較
千葉県こども病院循環器科1),心臓血管外科2)
中島 弘道1),犬塚 亮1),山澤 弘州1),本間 順1),青墳 裕之1),杉本 晃一2),内藤 祐次2),青木 満2),藤原 直2)

【目的】TOFにおける大動脈基部の拡張を,出生後類似の血行動態であるPAIVSの大動脈基部径と比較し検討する.【方法と対象】1990年から2005年までに出生し当院で治療を行った患者のうち,TOF(VSD-PAを含む)は染色体異常,重篤な合併奇形,右側大動脈を除き生後 3 カ月以内にBT shunt手術を必要とした20例.PAIVSは同様にBT shunt手術を必要とし,次の手術までの間,肺動脈閉鎖のままか,Brock手術を同時施行してあっても右室流出路の血流の乏しかった17例とした.未手術の初診時期および次の手術施行前に記録されたエコー検査にて,大動脈弁輪部(An),Valsalva洞(Val),sino-tubular junction(STJ)の径を測定し,%N値およびそれぞれの計測値の経過中の拡大率を比較した.【結果】1 回目と 2 回目のエコー施行時期はTOFで日齢14.5,464.7日,PAIVSで17.5,395.1日であり両群に有意差はなかった.1 回目の計測でTOFではAn,Val,STJのm±SD%Nはそれぞれ(148.1±14.1%,143.9±11.4%,147.9±12.5%)でありPAIVSでは(122.2±11.9%,123.8±12.8%,126.8±13.8%)であった.また 2 回目はTOFで(150.5±14.7%,146.3±14.8%,144.7±20.2%)であり,PAIVSでは(122.5±13.6%,128.4±16.9%,132.2±12.8%)であった.それぞれの疾患のなかでは,各値に有意差はなく,1,2 回目の測定にも差はなかった.TOFとPAIVSを比較すると初診時からすべての値が有意にTOFで大きく(p < 0.0001)また 2 回目のエコーでも,同様にTOFで大きかった.(An,Val,STJそれぞれp < 0.0001,p < 0.01,p < 0.05).しかし両群の拡大率には有意差はみられなかった.【考察】ともに肺血流が動脈管依存であるTOFとPAIVSの大動脈基部は正常より拡張していたが,TOFでは新生児期から拡張がより著明であり,解剖学的特徴と思われた.しかしその後の拡大率は両疾患において差はなく,短絡手術による過大な大動脈血流等が同程度に影響していると考えられた.

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