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無名動脈圧迫による気管狭窄の検討
北海道立子ども総合医療・療育センター循環器科1),心臓血管外科2)
横澤 正人1),阿部 なお美1),高室 基樹1),畠山 欣也1),橘 一俊2),渡辺 学2),高木 伸之2)

【背景】無名動脈の圧迫による気管狭窄は,小児循環器領域では報告は少ないが,障害児領域では極めて重要な問題である.突然の呼吸障害を起こし,動脈気管瘻を形成した場合は気管内に大量出血し,死亡例も少なくない.【対象と方法】当施設で無名動脈による気管狭窄と診断された 5 例を対象とし,臨床像を検討した.【結果】年齢は10~32歳.5 例とも障害児であったが,3 例は経口摂取可能,2 例は起立可能な状態だった.基礎疾患は,脳室周囲白質軟化症 1 例,窒息による低酸素性脳症 1 例,染色体異常 1 例,先天性サイトメガロウイルス感染症 1 例,原因不明 1 例.診断の契機は 1 例が気管出血,4 例は呼吸障害であった.4 例中 2 例は他疾患の手術目的で全身麻酔したところ換気不全となった.1 例は呼吸不全で他施設へ救急搬送され呼吸管理となった.症状改善して抜管したところ 3 時間後にCPAとなった.1 例は気道感染に伴いCPAの状態となり他施設へ救急搬送された.診断は3DCTならびに気管支ファイバーにて確定した.2 例で無名動脈切断術,2 例で人工血管を用いた無名動脈移植術を行った.1 例は気管内ステント目的で他施設に紹介されたが,気管支ファイバー施行中に大量の気管出血を起こし死亡した.5 例中 4 例が側弯症で,5 例とも胸郭の前後径が短く頸椎の後弯を欠いたstraight back syndromeの体型を呈していた.診断前に気管切開が行われていた例は 1 例のみであった.【考察】無名動脈の圧迫による気管狭窄に対する一般の医療現場での認識度は低い.今回の検討においても呼吸障害からCPAに至った 2 例も前施設では診断がついていなかった.障害児の突然死のなかには本疾患が少なからず存在しているのではないかと推測される.本疾患が疑われた場合には小児循環器医にコンサルトされることが少なくないと思われるので,疾患に対しての十分な認識をもつことは重要である.

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