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手術適応判断時肺高血圧が問題となったDown症候群の成人後の循環動態
北里大学医学部小児科1),KKR立川病院小児科2)
安藤 寿1),堀口 泰典2),中畑 弥生1),木村 純人1),石井 正浩1)

【背景】Down症候群(Down)では肺高血圧(PH)が問題となる.【目的】PHのため手術適応判定に苦慮した例の成人後の循環動態を検討する.〈症例 1〉29歳男性.診断:Down,VSD,PH.2 歳 4 カ月時右室圧(RVp)88/0,Rp/Rs89%,シャント右左優位(21.9%,左右14.6%)で手術不可と判断された.5 歳時,RVOTO(圧差36)出現.RVp 84/0だがシャント左右優位(32%,右左0%)で 5 歳 9 カ月時VSD閉鎖,RVOT拡大術を実施.術後 3 カ月時RVOTOなしRVp 56/0.28歳 4 カ月時RVp 40であった.現在NYHA class 1 で作業所に通い,マンション11階の自宅まで階段歩行で登ることもできる.〈症例 2〉36歳男性.診断:Down,VSD,PH.Downの診断確定後 4~5 年間両親が治療をあきらめ受診していなかった.比較的元気に過ごしていたこともあり,主治医の説得に応じて13歳 4 カ月時心カテを受けた.RVp 88/0,mPA 80/40(66)であったがトラゾリン負荷でmPA 72/30(48)と減少,14歳 6 カ月時VSD閉鎖術が行われた.3 カ月後RVp 46/0,mPA 32/8.33歳 5 カ月時PHなし.NYHA class 1 で作業所に通っていた(圧単位mmHg).【考察】2 例ともPHが存在したが症例 1 はRVOTO出現で改善.症例 2 はトラゾリン負荷により,肺血管床の反応性確認後手術を行った.PHは術後19年以上再現なく経過良好で,Down,PH例でも術前評価で「アイゼンメンジャー化」が否定されれば術後PH再現がない.症例 1 でRVOTOが生じたことが肺血管抵抗を減少させた可能性がある.【結論】(1)Downであっても術前評価で「アイゼンメンジャー化」が否定されればその後肺高血圧の再現はない.(2)Down症候群の治療では一度「アイゼンメンジャー化」と診断されても,繰り返し肺血管の評価を行いその血管抵抗の減少を逃さない努力が必要である.(3)右室流出路狭窄の出現は,肺血管抵抗の減少を促す可能性がある.

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