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心室中隔欠損症における左室後負荷,左室収縮能の検討
脳神経疾患研究所附属総合南東北病院小児心臓外科1),小児・生涯心臓疾患研究所2),小児科3)
森島 重弘1),小野 隆志1),中澤 誠2),工藤 恵道3)

【目的】心室中隔欠損症(VSD)は大動脈弁閉鎖後も左右短絡により左室収縮が持続する.そのため左室収縮末期圧(Pes)の低下,左室後負荷の減少が想像される.また左室容量負荷の増大,左室等容性収縮期の減少など左室心筋機能低下も懸念される.心臓カテーテル検査(Cathe)と心エコー検査(UCG)を施行し,左室収縮末期壁応力(ESWS)と左室収縮能を測定し検討した.【方法】心室中隔欠損孔が大きいと推測されるQp/Qs > 2.0,または肺高血圧症合併の乳児期VSD 5 例を対象とした.左室の駆出開始,終了の時点では肺動脈と左室の血圧は同じと仮定し,Catheで左室圧(LVp)が肺動脈圧(PAp)より高い時間を左室駆出時間(ET),収縮末期にLVpとPApが同圧の時をPesとした.同時にUCGを行い左室拡張末期径,左室収縮末期径,左室短縮率(SF),収縮末期左室後壁厚,上行大動脈血流ドプラより大動脈駆出時間(AoET)を測定した.ET延長の指標として左室が大動脈に駆出する時間と右室に駆出する時間の比率を求めた(ET/AoET).以上の測定結果からESWS,心拍補正平均左室短縮速度(mVcfc)を求め,mVcfcとESWSよりstress velocity index(SVI)を計算し左室収縮能の検討を行った.【結果】SFは0.33~0.38(平均0.35)で全症例正常範囲だった.Pesは68から18mmHg(平均47mmHg)と低下している症例を認めた.ET/AoETは0.84か1.42とETが延長している症例を認めた.ESWSは54.0から17.9dyn/cm2(平均33.0dyn/cm2)と低値を示す症例を認めた.SVIは-5.6~4.1(平均-0.7)で心機能の低下が懸念される症例を認めた.SVIはET/AoETと有意に負の相関関係を認めた(r = 0.93,p < 0.05).【考察】VSDの心室内左右短絡のため大動脈弁閉鎖後もETが延長しPesの低下,ESWSの減少している症例があり,FSは良好であるが左室収縮能が低下している可能性がある.大動脈弁閉鎖後も左右短絡で右室に駆出する時間が長いと左室収縮能が低下する可能性が示唆された.

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