P-111
Long RP頻拍を呈し,アデノシン感受性とリエントリー機序を認めた小児期心房頻拍の 3 例について
弘前大学医学部小児科
佐藤 工,米坂 勧,高橋 徹,上田 知実,北川 陽介,今野 友貴,大谷 勝記,江渡 修司

【はじめに】long RPを呈する上室性頻拍(SVT)は,ATPなどの薬剤による発作停止に難渋する例が少なくない.今回われわれは,long RP頻拍を呈し,電気生理学的検査(EPS)上ATP感受性とリエントリー機序を認めた心房頻拍(AT)の 3 例を経験したので報告する.【症例 1】17歳,男性.7 歳時VSD,TCRVに対する根治術を施行.14歳より動悸を反復した.EPS上期外刺激作成法で容易にlong RPのSVTが誘発され,ATP静注にて停止した.さらに,早期刺激間隔と頻拍第 1 拍までの間隔(PPI)が逆相関を示しリエントリーが推察された.右房内mappingからKoch三角内ATと診断した.カテーテル焼灼術(RFCA)は一過性効果であったが,プロプラノロール内服で発作は抑制されている.【症例 2】16歳,女性.生後 5 カ月時VSDの根治術を施行.2 歳よりSVTを反復した.EPS上期外刺激作成法にてlong RPを呈するSVTが容易に誘発され,ATP静注にて停止した.早期刺激間隔とPPIとの逆相関,および頻拍中のconcealed entrainmentからリエントリーが推察された.右房内mappingにて低位右房側壁が起源と考えられ,手術時の右房切開に伴うincisional ATと診断した.RFCAによる根治には至らなかったが,プロプラノロール,ジゴキシンの内服で発作は抑制されている.【症例 3】6 歳,女児.基礎心疾患なく,2 歳より動悸を反復した.EPS上期外刺激作成法でlong RPを呈するSVTが容易に誘発され,ATP静注にて停止した.また,期外刺激間隔とPPIとの間に逆相関を示し,リエントリーが推察された.右房内mapping上冠静脈洞内近位部起源のATと診断.verapamilによる顕著な頻拍誘発抑制効果を認め,以後同剤内服にて発作はみられていない.【まとめ】long RP頻拍を呈するSVTに対しても,ATPはまず試みられてもよい薬剤である.また詳細なEPSによる検討から,頻拍機序の解明とそれに基づく薬剤選択にて,良好な発作コントロールが期待できる.

閉じる