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先天性心疾患患者における動脈血ガス分析—チアノーゼ症例,Fontan術後,ファロー四徴術後の血液ガスの特徴
大阪大学大学院医学系研究科小児科1),国立循環器病センター小児循環器診療部2)
岡田 陽子1,2),大内 秀雄2),山田 修2)

【背景】換気亢進は心不全の特色の一つであり,その主要な機序には,肺における死腔換気増加がある.一方,先天性心疾患患者(CHD)では,この機序に加えて低酸素血症は大きな換気刺激となる.また,最近ではこれらの機序に加えて,中枢性の二酸化炭素感受性亢進が注目され,この交感神経活性との関連が指摘されている.しかしながら,CHD患者での実際の血液ガス分析と交感神経賦活度を含めた神経体液性因子との関連の詳細は不明である.【目的】主要なCHD患者(チアノーゼ症例:Cy群,Fontan症例:F群,ファロー四徴術後:TF群)の血液ガス動態と交感神経賦活度を含めた神経体液性因子との関連を検討すること.【対象と方法】F群51例,Cy群10例,TF群30例について安静時動脈血ガス分析を比較し,血清ノルエピネフリン濃度(NE),およびBNP濃度との関連について検討した.【結果】動脈血ガス分析では酸素分圧(PO2)はF群,Cy群,TF群で,おのおの72±2, 47±2, 93±3mmHgでF群,Cy群がTF群より有意に低値であり,二酸化炭素分圧(PCO2)はおのおの,34±1, 36±2, 38±1mmHgで,F群は有意に低値を示したがCy群とTF群に差はなかった.TF群およびCy群ではPCO2とPO2に負の相関を認めたが,F群では相関性はなかった.BNPとNEはTF群において正の相関が認められたが,F群,Cy群では相関性は認められなかった.血清NEは 3 群間で有意差はなく,BNPはF群で有意に高値であった.全群の解析ではNEはPO2と負相関を示したが(r = -0.23,p < 0.01),PCO2との関連はなかった.一方,BNPは血液ガス動態と関連しなかった.【まとめ】Cy群の動脈血液ガスの特徴はhypoxemia,normocapneaであるが,F群ではhypoxemia,hypocapneaが特徴である.TF群とCy群では換気効率低下がPCO2上昇に関連するが,F群では,換気効率に加え,他の換気刺激が低いPCO2にかかわっている.交感神経賦活との関連は明らかでなかった.

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