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新生児期に診断し得た,心室中隔欠損に合併する大動脈弁逸脱
昭和大学横浜市北部病院循環器センター1),こどもセンター2),岡山大学大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科3)
山邊 陽子1),黒子 洋介1),伊藤 篤志1),石野 幸三1),富田 英1),上村 茂1),西岡 貴弘2),澤田 まどか2),松岡 孝2),曽我 恭司2),佐野 俊二3)

【背景・目的】心室中隔欠損症に合併する大動脈弁逸脱では,経過観察中に逸脱が出現し,その後徐々に進行する例を多数経験する.報告の少ない,新生児期の大動脈弁逸脱を 4 例診断し得た.他の逸脱例との比較も交えて,その特徴につき報告する.【対象】2005年 1 月~2007年12月に当施設で経験した心室中隔欠損(VSD)159例につき検討した.そのなかで新生児期にVSDと診断されたのは133例であった.【結果】VSD 159例中,室上稜上部欠損23例,傍膜様部欠損87例で,大動脈弁逸脱は17例に合併していた.このうち右冠尖逸脱21例,右冠尖および無冠尖逸脱 2 例であり,無冠尖のみの逸脱は認めなかった.また逸脱例のうち 2 例では,初診時,高肺血流により心負荷を認めていたが,経過中,大動脈弁逸脱の出現・進行により心不全症状の軽快をみた.逆に,弁逸脱を認めなかった室上稜上部欠損 3 例で,高肺血流のため生後半年以内に外科治療を要した.一方,新生児期のVSD診断133例のうち,室上稜上部欠損は11例,傍膜様部欠損67例であり,4 例ですでに大動脈弁逸脱を合併していた.【症例】新生児期に大動脈弁逸脱を認めた 4 症例において,弁逸脱を診断した日齢は,それぞれ日齢 2,10,18,28であり,1 例のみ傍膜様部流出路進展型欠損で,残りは室上稜上部欠損であった.いずれもカラードプラでは径 3mm以下の小欠損で心不全症状はなく,すべて右冠尖逸脱であった.また発見時いずれの症例もARは認めなかった.2 例で生後18カ月以内にVSD閉鎖術を施行,残り 2 例は手術待機中である.【結語】室上稜上部および傍膜様部VSDのなかには,新生児期より大動脈弁逸脱を認める例があり,大動脈弁逸脱はVSDに合併するのみでなく,独立した心疾患として検討する余地があると考える.

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