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当院ならび関連施設における胎児心臓病外来の現況
札幌医科大学小児科1),北海道立子ども総合医療・療育センター循環器科2),新生児科3)
長谷山 圭司1),堀田 智仙1),阿部 なお美2),高室 基樹2),畠山 欣也2),横澤 正人2),春日 亜衣3)

【背景】北海道という地域特性上,出生前診断の必要度,有用性は高い(春日亜衣,ほか:重症先天性心疾患新生児に対する地域中核病院での対応.第43回日本小児循環器学会総会).【目的】2006年 6 月より当院ならびに関連施設において,胎児心臓病外来を開設した(現在先進医療施設認定申請中)が,その現状ならびに問題点について考察すること.【結果】胎児心臓病外来開設前の胎児心エコー検査依頼は年 5,6 例程度であったが,2006年は22件の依頼があり,3 例が不整脈,1 例がCHD,2007年は84件の依頼があり,3 例が不整脈,14例がCHDであった.産科側から:胎児心臓病外来開設前に産婦人科医会を通じ,胎児心エコー検査についての講演ならびにアンケート調査を行った.産科医としては,胎児心エコー検査の重要性は理解しているものの,日常診療のなかでルーチン検査として施行することに困難さを感じているという意見が多かった.関連A施設においては,年間分娩数が297件あったが,そのうちCHDとしてフォローアップを必要とした症例数は14例で,そのうち胎児診断されたのは 7 例であった.胎児診断されなかった 7 例中 4 例はレベル I スクリーニング検査で抽出可能な疾患であった.関連B施設では,年間分娩数が1,410件であったが,レベル I スクリーニングで異常なしとされた1,366例中 4 例にCHDを認めた.小児科側から:レベルIIスクリーニングで異常なしと判定した86例のうち,1 例に小さな筋性部心室中隔欠損が見つかった.また,大動脈縮窄の胎児診断であったが,出生後に大動脈弓離断と判明した例があった.【考察】胎児心臓病外来開設後,産科医に積極的に働きかけることにより,出生前診断の有用性の認識が高まり,レベルIIスクリーニング数は増加傾向にあるが,レベル I スクリーニングで抽出されない症例もあり,さらなる啓蒙活動が必要である.小児科サイドとしては,技術,診断精度の向上が望まれる.

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