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重度の僧帽弁閉鎖不全を合併した左房憩室の 2 症例
埼玉県立小児医療センター循環器科1),心臓外科2)
菅本 健司1),小川 潔1),星野 健司1),菱谷 隆1),河内 貞貴1),篠原 玄2),松村 洋高2),野村 耕司2)

左房憩室(left atrial diverticulum,以下LA div)はまれな疾患であり,その臨床像も不明な点が多い.今回,われわれは重度の僧帽弁閉鎖不全を合併した左房憩室を 2 症例経験したので診断・治療の問題点を踏まえ,文献的考察を含め検討した.症例 1:3 歳 8 カ月時に心雑音を指摘され心エコーにてmassive MR,LA divの診断(無症状であった).心血管造影,MD-CTにて形態診断し手術を行った.カテーテル検査では肺高血圧は認めず.MD-CTでは左心耳の後下方に 7×3.5cm大の憩室.肺血流シンチグラムではRt:Lt = 73:27(%)と左肺下葉血流低下.手術は憩室の切除と僧帽弁形成を行ったが,水試験で弁逆流が有意に残り僧帽弁置換を行った.憩室内腔の壁は繊維性の隔壁を伴っており組織的には軽度変性を伴う心筋細胞で特異的所見なし.症例 2:4 カ月時に心雑音と体重増加不良を指摘され心エコーにてmassive MR,LA divの診断.有意な心不全症状あり,心血管造影を行い手術を行った.肺動脈造影では左肺は憩室で圧排され血流は乏しく,肺血流シンチグラムではRt:Lt = 88:12(%).大動脈造影にて左回旋枝が憩室上を走行していたため,手術は冠動脈を避け左房内腔からの憩室壁の縫縮と僧帽弁形成を行った.僧帽弁逆流は術直後はごく軽度であったが徐々に増加しmoderate.心エコー上,肺高血圧は改善し肺血流シンチグラムもRt:Lt = 68:32(%)と改善した.現在のところ 2 症例ともにLA divの拡大などは認めておらず経過は良好.診断・治療上の留意点としては憩室の形態診断,冠動脈走行,左右肺血流バランス,肺高血圧の評価,憩室の切除・縫縮時の僧帽弁輪の変形などが挙げられる.

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