P-120
当院で経験した乳児心房頻拍症の検討
土浦協同病院小児科
細川 奨,渡部 誠一,石井 卓,梶川 優介,島田 衣里子

【背景】小児の上室性頻拍のうち異所性心房頻拍(以下EAT)は約15%を占める.主な原因は,洞結節以外からの心房筋の自動能亢進により生じ,発生起源は心房内や大静脈などに存在すると考えられている.今回当院で経験した乳児心房頻拍症の治療経過およびその予後に関して検討した.【対象】0~3 カ月(平均1.3カ月)のEAT 4 例(男児 3 例,女児 1 例)を対象とした.いずれも先天性心疾患の合併は認めなかった.追跡期間は 8~65カ月(平均28カ月)である.【結果】初診時の不整脈の診断は,心房粗動 2 例,発作性上室性頻拍 1 例,洞性頻脈 1 例であった.このうち心房粗動で見つかった 2 例は,頻脈誘発性心筋症を併発していた(このうち 1 例のHANP 941pg/ml,BNP 731pg/ml).2 例にATPが投与されたが無効.電気的除細動は 3 例に施行されたが,いずれも無効.Ia群は 3 例に投与され,別の不整脈(心室性期外収縮,房室ブロックなど)が出現した 2 例を含め,いずれも無効であった.これに対して,ジゴキシンは,心拍数コントロール目的として全例に有効であった.またβ遮断薬は 3 例中 2 例で有効であった.なお,硫酸マグネシウムはβ遮断薬との併用で有効例を 1 例に認めた.いずれの症例も,最終的にはジゴキシン単独あるいはジゴキシン + β遮断薬併用にてコントール良好であった.退院後に再発したのは 1 例であった.また薬剤を中止できた症例が 2 例あり,中止後も再発は認めていない.ほかの 2 例も現在減量中である.【結論】乳児心房頻拍症は発見時に頻脈誘発心筋症を併発していることが多く,治療はre-entryと異なりATPや電気的除細動が無効であった.従来から報告されているジゴキシン,β遮断薬単独あるいはその併用による,心拍数コントロールが有効であった.当院ではKチャネル遮断薬の使用例はなかった.また時間経過で徐々に軽快しており,予後は良好と考えられる.

閉じる