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心臓横紋筋腫に合併したWPW症候群で,腫瘍の縮小に伴いδ波の消退を認めた 1 例
土浦協同病院小児科
梶川 優介,渡部 誠一,石井 卓,島田 衣里子,細川 奨

【はじめに】横紋筋腫はまれな疾患ではあるが,血流障害・心筋障害・伝導障害といった症状を起こし,心室内の伝導障害により多彩な心電図変化を来すことが知られている.今回,結節性硬化症の心臓横紋筋腫にWPW症候群を合併し,房室接合部近傍の腫瘍の縮小に伴い,δ波が消退傾向となった症例を経験したので報告する.【症例】現在 2 歳になる女児.妊娠30週より胎児エコーにて心臓腫瘍を指摘.在胎41週 2 日,3,286gで出生.出生時の心エコーでは,左心室心尖部と左室心基部中隔に15~20mm,右室心尖部・右室中隔中部・右房側心房中隔(房室接合部近傍)に 8~10mmの腫瘍があり,左室流出路は4mmと狭窄を認めた.頭部CTでは脳室上衣下に石灰化が多発.結節性硬化症と診断し,心臓腫瘍は横紋筋腫と考えた.心電図は,不完全右脚ブロックパターンで,陰性δ波はR,陽性δ波はI・II・LV 1~3,二相性δ波をLV 4~6 誘導で認めた.ホルター心電図では心室性期外収縮(PVC)が散発.全身状態・哺乳は良好で,左室流出路狭窄も改善傾向となり,生後 1 カ月半で退院となった.その後,外来で慎重なフォローアップを続けたが,心不全症状・発作性上室性頻拍(PSVT)等の発作性不整脈は出現しなかった.心エコーでは,左室内の 2 個の腫瘍の大きさはあまり変わらないが,成長とともに心内腔が拡大して左室流出路の狭窄は改善した.2 歳前に右室中隔中部と右房側心房中隔(房室接合部近傍)の腫瘍は消失した.それに伴い心電図では,右脚ブロック・PVC散発するが,δ波は,陰性δ波はR,陽性δ波を I・LV 3~6 誘導で認めるものの消退傾向となった.【考察】結節性硬化症に心臓内に巨大な横紋筋腫を複数認めた症例であったが,心電図・心エコーで経時的に観察したところ,右房側心房中隔(房室接合部近傍)の腫瘤の消失に伴い,δ波の消退を認めた.右房側心房中隔(房室接合部近傍)の腫瘤が房室伝導遅延をもたらし,δ波が出現していた可能性を考える.

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