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高心拍出性心不全の胎児血行動態—原因による比較
筑波大学臨床医学系小児科1),産婦人科2)
高橋 実穂1),堀米 仁志1),加藤 愛章1),小畠 真奈2),濱田 洋実2)

胎児心エコー計測で高心拍出状態と診断された 3 症例について,血流分布の経時的変化,大動脈および肺動脈流速,卵円孔の相対的狭窄の程度(FO/RA比)と予後との関連性を検討した.【症例 1:Parvo B19感染による貧血】21週に胎児腹水を指摘.27週の胎児採血でHb 6.1g/dl.CTAR 58%で両心室拍出量(ml/kg/min)= 1,082(27週 6 日)→1,351(28週 4 日)→1,000(29週 0 日)で,RV:LV = 53:47→50:50→60:40であった.28週 6 日に胎児輸血を施行し上記心拍出量の軽減が認められたものの,29週 4 日には両心室拍出量は1,137(RV:LV = 40:60)と左室側に血流分布が偏位した.AoおよびPAはいずれも1m/sec以上に上昇しその比は 1 未満であったが,左心室拍出が50%以上を超えると1.2になった.FO /RA = 0.36(28週)→0.33(29週)とほぼ変化なし.出生時のHb11.0g/dl,集中治療を要したが日齢151に退院.【症例 2:仙尾部奇形種】27週に仙尾部奇形種を指摘.CTAR 30%で,両心室拍出量(ml/kg/min)= 610(27週)→780(32週)に増加し,RV:LV = 44:55→23:77と正常よりさらに右室側に血流分布が偏位した.Ao,PAの流速も増加し1m/secを超えたがその比は0.9と一定であった.FO/RA = 0.37から0.23と変化した.出生時のHb 20.1g/dl,心不全なし.【症例 3:Galen大静脈瘤】32週に心拡大を指摘.両心室拍出量(ml/kg/min)= 1,150(32週)→1,504(36週)に増加し,RV:LV = 60:40→65:35とさらに右室側に血流分布が偏位した.Ao 1.5m/s,PA 1.4m/sと上昇し,比は1.1であった.FO/RA = 0.25から0.19と変化しCTARも38%から46%に増加した.出生後コイル塞栓をしたものの短絡量が多く治療抵抗性で死亡した.【まとめ】貧血による高心拍出が進むと,左心室側への血流分布が偏位し大動脈流速は肺動脈流速よりも上昇する.動静脈瘻や腫瘍は右心室側への血流分布がより顕著になるが,DICなどにより貧血を合併すれば,血流分布や大動脈流速が修飾される可能性が考えられた.

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