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膜電位依存性カリウムチャネル複合体の酸化還元状態による変化
東京女子医科大学国際統合医科学インスティテュート1),循環器小児科2)
羽山 恵美子1),中西 敏雄1,2)

【背景】動脈管は胎児期に開存しているが,生後酸素に反応して収縮閉鎖する.血管の収縮弛緩は静止膜電位に依存するが,これはおもにカリウムチャネルによって制御され,閉じれば脱分極となり血管は収縮する.われわれは生後直後および胎仔のブタ動脈管ならびに肺動脈に発現するおもな膜電位依存性カリウムチャネル(Kv)αサブユニットはα1.5,β1サブユニットはβ1.2であり,α1.5はβ1.2によって不活性化を促進され負の制御を受けること,α1.5とβ1.2を共発現するとおもに細胞膜に局在することを報告した.【目的】bサブユニットによるαサブユニット制御のメカニズムを探る一端として,Kv複合体を抽出し生化学的性質を検討すること.【方法】HAまたはFLAGタグをC末に付加したブタKv1.5およびKvβ1.2をHEK細胞に導入発現させた.界面活性剤を含む緩衝液でKv複合体を抽出し抗タグ抗体によりアフィニティ精製しblue-native PAGE(BN-PAGE)を用いて泳動分離した.【結果・考察】BN-PAGEにより,Kv1.5複合体はおよそ630kDa,Kvβ1.2複合体はおよそ530kDa,Kv1.5/Kvβ1.2複合体はおよそ800kDaに分離された.Kv1.5およびKvβ1.2はいずれも 4 量体を形成するとされるが,本複合体はアミノ酸配列から計算される 4 量体の分子量(Kv1.5:263kDa,Kvβ1.2:182kDa)より大きいことから,Kv1.5およびKvβ1.2の翻訳後修飾,ならびに複合体に結合するタンパク質が存在する可能性が考えられた.また,Kv1.5複合体をSDS-PAGEで分離すると,還元剤存在下でモノマーならびにポリマーと推定される複数のKv1.5のバンドがみられ,還元剤非存在下ではモノマーは消えポリマーの割合が増加した.Kv1.5ポリマーの形成には細胞内の酸化還元状態が寄与する可能性が示された.

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