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肺動脈絞扼術後に肺動脈拡大が急速に進行したLoeys-Dietz症候群の新生児例
名古屋第一赤十字病院小児医療センター循環器科1),新生児科2),心臓血管外科3)
永田 佳絵1),河井 悟1),生駒 雅信1),羽田野 為夫1),孫田 みゆき2),鈴木 千鶴子2),中山 雅人3)

【はじめに】Loeys-Dietz症候群は両眼隔離,口蓋裂,動脈の蛇行と瘤形成を 3 徴とする症候群で,TGFBR遺伝子の異常によって起こる.動脈瘤はマルファン症候群と比べて,より若年から発症し進行も早い.今回,両大血管拡張にVSDを合併し,TGFBR2遺伝子変異を示した新生児例を経験したので報告する.【症例】在胎41週 3 日,出生体重3,356gの男児.家族歴は特記すべきことなし.出生後の心エコーで,subpulmonary VSD,ASD,両大血管のValsalva洞〔Ao:19.0mm(+9.4SD),PA:19.2mm(+5.6SD)〕と大動脈弁輪〔11.1mm(+5.9SD)〕の拡大と診断した.合併奇形として両眼隔離,小顎症,口蓋裂,手指の変形,内反足,鼠径ヘルニアを認めた.心不全が進行したため日齢12に肺動脈絞扼術(外周20mm)を行ったが,術後に肺動脈絞扼部の近位,遠位ともに急速に拡大し,日齢40には肺動脈(洞部)が33.1mm(+9.2SD),右肺動脈が12.1mm(+6.6SD),左肺動脈が8.60mm(+3.7SD)となった.日齢42に心内修復術(VSDパッチ閉鎖,肺動脈瘤縫縮術)を施行したところ,瘤部の肺動脈壁は非常に薄く,染み出すような出血と血性心嚢水を認めた.肺動脈壁の病理所見ではmyxomatousな変化と短く断片化した弾性繊維がみられ,マルファン症候群類似疾患が疑われた.染色体検査は46XYと正常男性型であったが,遺伝子検査でTGFβR2遺伝子に変異を認め,Loeys-Dietz症候群と診断した.気管軟化症による抜管困難のため気管切開術を施行し,日齢200に在宅呼吸管理で退院となった.心内修復術後は急速な血管径の拡大はないものの,両大血管のValsalva洞や弁輪は依然として拡大傾向にあったため,ACE阻害薬の投与を行い現在のところ進行は抑えられている.今後は動脈の拡大がさらに進行する可能性があり,慎重な経過観察が必要である.【まとめ】Loeys-Dietz症候群の報告例は散見されるが,動脈瘤にVSDを合併した例はまれであり文献的考察を加えて報告する.

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