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当院における18トリソミーの表現型,外科手術と予後
慶應義塾大学医学部小児科
前田 潤,潟山 亮平,玉目 琢也,古道 一樹,福島 裕之,山岸 敬幸

【背景】18トリソミーは絶対的予後不良と考えられ,手術適応が制限されてきたが,近年,合併心疾患に対する外科治療により予後が改善した報告例が散見される.しかし,18トリソミーの心疾患に対する手術適応の明確な基準はない.【対象と方法】2002年 1 月から2008年 1 月までの間に当院で経験した先天性心疾患を伴う18トリソミー 8 例(男 2 例,女 6 例)を対象として,心疾患を含む表現型,核型,治療,外科手術歴,予後について,後方視的に検討した.【結果】全例に子宮内発育不全があり,small-for-dateであった(出生体重:1,225~2,130g,平均1,653g,在胎週数:34~41週,平均38週).8 例中 4 例で羊水染色体検査が行われ,出生前に確定診断された.8 例全例が外表奇形や,中枢性無呼吸,痙攣,小脳形成不全などの中枢神経異常を合併していた.心疾患は,両大血管右室起始(DORV)+ 心室中隔欠損(VSD)2 例,DORV + VSD + 肺動脈狭窄(PS)1 例,大動脈縮窄複合 1 例,左心低形成症候群 1 例,VSD 3 例で,DORV + VSD + PSを除く 7 例が肺高血圧を合併していた.全例に心疾患に対する薬物療法が行われた.現在 8 例中 3 例(3 歳 6 カ月,4歳11カ月,21歳)が生存しており,長期生存 1 例(21歳)のみがモザイク型の核型であった.生存 3 例のうち 1 例は外科手術なしで入院治療中,残りの 2 例は手術治療(VSDに対する心内修復術 1 例,DORV + VSD + PSに対する体肺シャント術 1 例)後に退院した.両親の希望により 2 例が手術治療なしで退院したが,1 例は 1 カ月後に再入院,死亡,もう 1 例は 5 カ月後に突然死した.院内死亡した 4 例中 3 例には消化管疾患(食道閉鎖,肝芽腫,臍帯ヘルニア)が合併していたが,生存例には認められなかった.【結語】当院の少数例の検討では,重篤な心外合併症のない18トリソミーに対して,心疾患に対する手術が予後を改善する可能性が示唆された.多施設のデータを集積して,手術適応基準を検討していく必要性がある.

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