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肺動脈近位部の狭窄性病変に対して外科的解除術を施行し,肺動脈の発育を認めたAlagille症候群の 1 男児例
愛媛大学大学院医学系研究科小児医学1),愛媛県立中央病院2),慶應義塾大学病院3)
松田 修1),檜垣 高史1),村尾 紀久子1),山本 英一2),中野 威史1),村上 至孝1),太田 雅明2),長谷 幸治1),高橋 由博1),森谷 友造1),小崎 健次郎3)

【緒言】Alagille症候群は,小葉間胆管減少による慢性肝内胆汁うっ滞に,特徴的顔貌・椎骨異常・心血管系異常などの肝外症状を伴う,常染色体優性遺伝疾患である.20p12のJAG1遺伝子変異が約70%に認められるが,変異陽性例では末梢性肺動脈狭窄(PPS)の頻度が高く,両側性でかつ広範囲/低形成である頻度が高いとの報告がある.PPS重症例に対する外科的治療やバルーン拡張術は無効であることが多いが,肺動脈弁・弁上狭窄や肺動脈近位部の狭窄性病変に対しては有効との報告もある.【症例】6 歳男児,35週 3 日,2,175gで出生.慢性胆汁うっ滞・特異顔貌・潜在性二分脊椎・網膜色素変性を認める.肝生検は未施行.新生児期の心エコーでPS・PPSを認め,TRによる推定右室圧は40mmHgであった.【臨床経過】JAG1遺伝子のフレームシフト変異を認め,Alagille症候群と確定診断した.右室圧の低下傾向を認めず,2 歳時に心臓カテーテル検査を施行した.RVp 45/EDP 6,RVp/dAop 0.5,PAI 56,肺動脈弁上狭窄・左肺動脈分岐部狭窄を認め,肺動脈は全体的に低形成であった.4 歳時に肺動脈弁上狭窄・左肺動脈分岐部狭窄の外科的解除術を施行した.6 歳時に再度カテーテル検査を施行,RVp 43/EDP 11,RVp/dAop 0.48,PAI 112と肺動脈は全体に発育していた.【結語】中等度の右室圧上昇を伴う肺動脈弁上狭窄・左肺動脈分岐部狭窄に対して外科的治療を行い,肺動脈の発育を認めたAlagille症候群の 1 男児例を経験した.文献的考察を加え報告する.

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