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Eisenmenger症候群における肺血管拡張療法の有用性
東邦大学医療センター大森病院小児科
嶋田 博光,池原 聡,高月 晋一,中山 智孝,松裏 裕行,佐地 勉

【目的】Eisenmenger症候群(ES)における肺血管拡張療法の有用性について検討すること.【対象および方法】対象は当院でberaprost(BPS),epoprostenol(Epo),sildenafil(Sil),bosentan(Bos)を投与したESの11例(男:女 = 2:9,24.9±10.4歳)で,基礎疾患はVSD 5 例(術後 2 例),ASD 4 例,PDA術後 1 例,APW 1 例である.喀血や失神などの重篤な臨床症状の有無,NYHAクラス,SpO2,CTR,BNP,6 分間歩行距離(6MWD)およびRpの変化を後方視的に検討した.【結果】開始時のNYHAクラスはII:4 例,III:5 例,IV:2 例で,SpO2は90.5±6.0%,CTR 54.9±10.8%,BNP 127±180pg/ml,6MWD 393±92m,Rp 31.7±13.6 U・m2である.肺血管拡張薬はBPS 5 例,Epo 3 例,Sil 6 例,Bos 4 例(2 例の 3 者併用を含む 6/11例が併用療法).観察期間は3.1±1.0年で9 例が生存し 2 例(いずれも術後症例)は投与開始後 3 年と 5 年で死亡した.開始前に喀血を 4 例,失神を 1 例認めたが,開始後は喀血を 1 例認めたのみ.NYHAクラスは 1 年目に10例中 4 例が改善し(2.8±0.8→2.4±0.5),生存例では 2 年目以降も増悪を認めなかった.治療前に比べて 1 年目にCTRは59.1±11.2→58.0±9.8%,SpO2は89.8±7.4→92.6±3.9%に変化した(いずれもn = 6).BNPは死亡例では経時的に増加したが,生存例では 1 年目に92.4(5.6~548)→62.3(6.7~277.3)pg/mlと低下(n = 6)し,3 年目以降も低下または不変であった.6MWDは 1 年目に 6 例中 5 例で増加(350±70→423±30m)し,経時的に測定し得た 3 例のうち 2 例は 2 年目以降も増加していた.経時的にRpを測定し得た3例では,開始時→1 年目→2 年目→3~4 年目がおのおの38.4±7.7→30.3±15.7→26.8±13.3→25.7±16.2 U・m2と低下していた.【結論】ESにおける肺血管拡張薬は心不全の改善が期待でき有用である.

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