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著明な肺高血圧を来した色素失調症の 2 カ月女児例
島根大学医学部小児科
南 憲明,安田 謙二

【はじめに】色素失調症(incontinentia pigmenti:IP)は新生児期からみられる特徴的な皮膚所見,痙攣,発達遅滞などの中枢神経合併症,好酸球増多症を呈するX染色体優性遺伝の形式をとる疾患である.まれに肺高血圧(PH)を合併した症例の報告があるが,その機序は不明である.今回,著明なPHを来したIPの女児例で,画像所見上,肺静脈狭窄を認めた症例を経験したので報告する.【症例】2 カ月女児:新生児期に皮疹と痙攣発作がありIPと診断された.2 カ月時に心雑音を指摘され,心エコー上TRPG > 100mmHg,著明な右室圧の上昇がみられた.3mm径の心房間短絡があり,また肺静脈(PV)の狭窄を認め,連続性の血流パターンであった.これ以外に有意な短絡疾患,狭窄病変はなく,PHが示唆された.胸部造影CTで,左上下,右上PVのlong segment狭窄を認めた.心臓カテーテル検査ではmPAp 112/48/m71,ltPCW m7,rtPCW m5,LAp m5,LVp 78/ed6であった.肺静脈狭窄(PVS)に伴う肺高血圧も疑われたが,PCWの著明な上昇はなく,PVの形態から外科的治療介入の適応はないと判断し,内科的に肺動脈性肺高血圧症(PAH)に準じて酸素投与,bosentan内服の導入を開始した.治療開始後,呼吸困難症状や肺うっ血の悪化はなく,治療開始30日後,心エコーでTRPG = 70mmHg程度まで改善がみられた.【まとめ】著明なPHを来したIPの乳児女児例を報告した.PHの原因としてPVSの関与が考えられたが,その機序は不明である.PAHに準じた治療が有効であった.

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