P-26
当院でのボセンタンの臨床使用と効果
社会保険中京病院小児循環器科
西川 浩,松島 正氣,大橋 直樹,久保田 勤也

【はじめに】ボセンタン(BO)は肺動脈性肺高血圧(PH)に対して保険適応の経口薬として期待される.【目的】当院でのBO症例の使用目的,効果からBOに何が期待されているか検討する.【対象と方法】2005年 8 月以降,当院観察中にBO導入した 8 例の後方視的検討を行った.導入年齢 2~37歳(中央値14.5),女性 6 例.【結果】心疾患はVSD 2 例,AVSD 2 例,右心バイパス対象 2 例,単心房 1 例,IPAH単独 1 例である.アイゼンメンジャー(EM)3 例(VSD 2,AVSD 1,2 例がダウン症),3 例は多脾症(38%).先行薬はHOT 4 例,ベラプロスト 2 例,α1遮断薬 2 例,NTGテープ 2 例,シルデナフィル,エポプロステノール 1 例.なしが 1 例.先行手術 4 例(50 %)(BVR + MVR;2.BTS;1,TCPC;1).使用目的はA:QOL向上 5 例,B:HOT離脱 2 例,C:フォンタン目的 1 例である.判定と効果はAでは自覚症や家族の聞き取り主体であり,有効継続は 2 例(40%)である.悪化 1 例(のちに肺移植),無効 1 例(failed TCPC),有効だが喀血にて中止 1 例.Bはカテーテル検査で判定し,無効 1 例(50%)は多脾症だった.Cはフォンタン適応に至らないがQOL向上から有効として心カテ待機中.全体として 4 例(50%)が有効.BOでの肝障害発症なし.【考察】臨床現場でのBOは従来の薬剤抵抗性PHへの効果が期待されるが,その到達点はさまざまであり,結果,目的到達は 5 割である.IPAH例はシルデナフィル使用後に併用し症状悪化した.シルデナフィルとの併用は逆効果を示す例もあり注意を要する.多脾症例では目的到達には至っていない.EM例はQOLで全例有効.うち 2 例に喀血を認め,1 例は使用を中止した.因果関係は不明である.【まとめ】BOを第一選択とできる有効疾患を明確にできるよう,今後,症例の蓄積が必要と考えられた.

閉じる