P-27
先天性心疾患の治療計画におけるsildenafilの有用性(第 2 報)—non-PH群での中期成績
三重大学大学院医学系研究科小児発達医学1),胸部心血管外科2)
三谷 義英1),大橋 啓之1),澤田 博文1),早川 豪俊1),高林 新2),新保 秀人2),駒田 美弘1)

【目的と背景】sildenafilは,肺動脈性肺高血圧における有効性が報告され,最近,肥大を伴う右室不全への強心作用も注目される.今回,肺高血圧(PH)を伴わない先天性心疾患(CHD)および右室不全を伴う小児例に対するsildenafilの中期成績を検討した.【対象と方法】対象は17例で,Glenn術後 4 例〔共通房室弁口を伴う単心室 2 例(ダウン症候群 1 例,総肺静脈還流異常合併 1 例),左心低形成症候群(HLHS)2 例〕,Fontan型術後 6 例(三尖弁閉鎖 1 例,単心室 1 例,HLHS 4 例),低形成肺動脈例 3 例(ファロー四徴 2 例,両大血管右室起始 1 例),右室不全 4 例(大血管転位Rastelli術後 2 例,三尖弁異形成 1 例,催不整脈性右室心筋症 1 例).急性効果は,右左短絡を伴う疾患でSpO2 3%以上の上昇を有意と判定した.中期効果は,開始後 6 カ月以後の心カテ造影所見,内服前SpO2,BNP値で評価した.【結果】SpO2でみた急性効果はGlenn術後 3 例(4 例中),Fontan術後fenestration(f)を伴う 2 例(2 例中),低形成肺動脈 3 例(3 例中)で認め,1 年後の中期でも同様に急性効果は認めたが,内服前SpO2に経時的変化はなかった.Glenn術後で,1 例でVV shuntは経時的に減少し,3 例ともに新たなVV shunt,APCAの増加は認めなかった.Fontan型術後例で経時的変化の追える 3 例では,f併用 2 例で心カテ所見,SpO2の改善は乏しく,残り 1 例で蛋白漏出性胃腸症を発症し,前者はボセンタン追加で経過観察中,後者ではボセンタン投与で改善した.右室不全例において,心カテ,エコー所見,BNP値は中期的に改善が乏しかった.【結語】sildenafil投与により,Glenn術後,f併用Fontan型術後,肺動脈低形成例でSpO2の急性上昇がみられ,1 年以後にも効果は持続した.しかしFontan型手術後,右室不全例の血行動態指標への中期的な効果は不定で,ボセンタン追加の効果も含め,さらなる症例の検討を要する.

閉じる