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ベラプロスト内服中に間質性肺炎(IP)を合併した機能的単心室に関する検討
長野県立こども病院循環器科1),心臓血管外科2)
梶村 いちげ1),安河内 聰1),瀧聞 浄宏1),松崎 聡1),武井 黄太1),里見 元義1),木村 光裕2),西野 貴子2),豊田 泰幸2),打田 俊司2),原田 順和2)

【背景】当施設では,肺動脈性肺高血圧に対する経口プロスタサイクリン類似体のベラプロストNaをFontan手術の適応拡大の目的で使用してきたが,ベラプロストNaの副作用として間質性肺炎(IP)の合併報告がある.【目的】Fontan手術前後に肺血管拡張目的でベラプロストNaを投与された症例におけるIPの危険因子を検討すること.【対象】1993年11月から2007年12月までにBDG/TCPCを施行され,ベラプロストNaを投与された76例(男54,女22).【方法】後方視的にTAPVC合併の有無,PVOの有無,また,PVO罹患期間,SVC圧,心房‐肺静脈圧較差,IP合併の有無について検討した.【結果】76例のうち 2 例(2.6%)でIPを合併した.合併例はすべて,PVOを合併していたのでBDG/TCPC中,肺静脈環流異常を合併した12例で検討した.肺静脈環流異常の形態はTAPVCのIaが 2,Ibが 2,IIbが 2,IIIが 2,Ia + Ibが 1,Ib + IIIが 1 で,三心房心が 1,TCPC(lateral tunnel)のbuffleによる肺静脈圧迫が 1 であった.このうちPVO発症は 8 例.IPを合併した群(A群)と合併しなかった群(B群)で比較した.SVC圧はA群で(19,12)mmHg,B群で11.4±2.4mmHg,PG(PV/LA)はA群で(11,8)mmHg,B群で1.6±1.2mmHgであり,A群が高値を示した.またPVO罹患期間はA群で(7.5,29.3)カ月,B群で1.3±1.6カ月でA群が長期であった.【結語】肺静脈環流異常を伴い,PVO罹患期間が長く,SVC圧の高い症例は,ベラプロストNa内服によるIP発症のハイリスク群であり,投与に際し注意が必要である.また,逆に,肺静脈環流異常が指摘されていない症例で,ベラプロストNaによりIPを呈した場合に,肺静脈環流異常の有無を再評価する必要があると思われた.

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