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大血管転位に新生児遷延性肺高血圧を合併した 1 例
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科1),小児心臓外科2)
岩本 洋一1),増谷 聡1),岡田 尚子1),石戸 博隆1),竹田 津未生1),先崎 秀明1),小林 俊樹1),岩崎 美佳2),枡岡 歩2),鈴木 孝明2),加藤 木利行2)

卵円孔狭小化(rFO)を有する大血管転位(TGA)では,出生時の酸素濃度上昇が不十分なために肺血管抵抗が低下せず,新生児遷延性肺高血圧(PPHN)を合併することがあるが,血中酸素濃度を上げられないため治療が難しく救命し得ない場合も多いとされる.rFOを合併するTGAにPPHNを合併した症例に対し,特徴的な血行動態を考慮し正常心に合併するPPHNとは異なる治療戦略をとり,有効であったので報告する.【症例】在胎40週,出生体重3,470gの男児.生後SpO2 40~50%の高度のチアノーゼが持続,他院にてTGA,rFOと診断され,PGE1開始後当院搬送.到着時SpO2 30~50%台,ただちにBASを施行し,一時的にSpO2は80%に上昇したが再び低下,動脈管・心房間レベルでの右左短絡よりPPHNの診断でNO吸入療法を開始.PPHNを脱せずPGI2投与も無効.過換気と重炭酸Na投与による極端なアルカリ化と体血管抵抗を上げる目的でバソプレシンを使用したが,動脈管を介して血流は大動脈に逃れ肺血流を維持できないため,心房間交通も右房から肺静脈還流が乏しく虚脱した左房へ短絡,右房‐左房‐左室‐肺動脈‐動脈管‐大動脈‐体静脈‐右房と,肺内を介さない循環を形成,酸素飽和度が低下するためさらに肺血管抵抗が上昇という悪循環となった.通常のPPHNと異なり肺循環を担うのは左室であるので,高血管抵抗に耐え得ると期待できること,肺循環が成り立たたず肺静脈からの還流が減っても体心室側の前負荷は維持されることより,動脈管は体肺動脈間でmixingが可能な分だけ維持できていれば循環が成り立ち,悪循環から離脱できると判断,PGE1を減量し動脈管を狭小化したところ有効な肺血流を得ることができ,SpO2の上昇に伴ってPPHNから徐々に離脱できた.NOを 6 日間,O2を11日間で離脱し,日齢14,arterial swicthを施行,術中,術後とも明らかな肺高血圧はなく,術後 2 週間で退院となった

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