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酵素補充療法を行っている乳児型Pompe病の治療経過
昭和大学横浜市北部病院こどもセンター1),循環器センター2)
松岡 孝1),田鹿 牧子1),西岡 貴弘1),澤田 まどか1),曽我 恭司1),富田 英2),上村 茂2)

【はじめに】乳児型Pompe病は心筋肥厚,筋力低下,呼吸障害など生じ,平均死亡年齢が8.7カ月と重症疾患である.酵素補充療法後は 1 年半生存率が98%と改善された.2007年 6 月から本邦でもマイオザイム®が治療薬として承認され,今回われわれは生後 4 カ月に酵素補充療法を開始した乳児型Pompe病を経験し,治療効果につき報告する.【症例】生後 4 カ月にクループ症候群の疑いで入院となった.心拡大と心電図上PQ短縮,高電位および心エコーにて心収縮低下(EF = 47%)著明な心筋肥大を認めた.また四肢筋緊張低下,肝腫大,肝酵素上昇を認めた.入院 7 日目に末梢血リンパ球の酸性αグルコシダーゼ活性低下(0.15nmol4-MU/min/mg)が判明し,乳児型Pompe病と確定診断した.<経過>入院 8 日目から,2 週ごとの酵素補充療法を開始し,現在16回施行した.肝腫大は速やかに改善し,入院時に認めた心機能低下は改善し(EF = 62%),BNPは(601.1→32.1pg/ml)と低下を認めたが,心筋重量減少は緩慢であった(左室心筋重量係数:293.5→168.6g/m2;329%N).<発達>仰臥位ではhead controlがあるが定頸を認めず,ハンカチテストは可能.呼吸障害は嚥下障害とともに悪化し,誤嚥やRSウイルス感染症を繰り返し人工呼吸器管理(気管内挿管,陰圧式呼吸器)を施行せざるを得ない状況である.【考察】乳児型Pompe病に対する酵素補充療法は,国際的,マルチセンター,オープンラベル試験で18例の研究では(Neurology 2007,68),補充酵素の組織分布に偏在性があり,骨格筋などへの分布は悪く,呼吸障害は悪化するケースがある.【まとめ】本症例は,現在11カ月で心筋重量や心不全は改善したが骨格筋低下の改善は不良であり,呼吸障害のため陰圧式呼吸器を使用しており,さらなる酵素補充療法の改良が考慮される.

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