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経管栄養中の児に発症し,カルニチン欠乏症ならびにセレン欠乏症が原因と思われた拡張型心筋症の 1 例
九州厚生年金病院小児科
米田 哲,熊本 崇,大久保 一宏,山村 健一郎,高橋 保彦,城尾 邦隆

【背景】カルニチン欠乏症や微量元素であるセレン欠乏症の合併症として,拡張型心筋症を来すことが知られている.今回,われわれは,拡張型心筋症を発症し,その原因としてカルニチン欠乏症およびセレン欠乏症が疑われた経管栄養の患児の 1 例を経験したので報告する.【症例】2 歳男児.在胎41週 6 日,3,604gで仮死なく出生.出生後すぐに脊髄髄膜瘤に気付かれ,Chil II型奇形と診断.その後髄膜瘤修復術ならびにVPシャント術を施行した.術後,いきみによる呼吸停止を繰り返し,第12月齢に退院するも,1 カ月後に自宅で呼吸停止から心肺停止となり,再入院となった.再入院後,挿管もしくはnasal CPAPによる呼吸管理ならびに経管栄養を行ったが,呼吸が不安定な状態が続き,その都度絶食を余儀なくされ,徐々にるいそうが目立つようになった.1 歳10カ月時に胸部X線写真上心拡大を認め経胸壁心エコー検査を施行.左室径の著明な拡大および左室壁の菲薄化,壁運動の著明な低下を認め,拡張型心筋症と診断した.二次性の拡張型心筋症として原因を検索したところ,血清遊離カルニチン値の著明な低下ならびに再吸収率の低下を認め,カルニチントランスポーター異常と診断された.また,血清セレン値の著明な低下を認め,セレン欠乏症も診断された.カルニチン製剤の経口投与ならびにセレン含有経腸栄養剤の投与により,血清遊離カルニチン値ならびにセレン値は改善し,心機能も改善した.【考察】通常の食生活において,カルニチン欠乏ならびにセレン欠乏を来すことは非常にまれであるが,経口摂取が困難で経腸栄養剤にて生活している児のなかに,これらの欠乏症を発症することが知られている.このような児では,カルニチンやセレンの欠乏がないか定期的にチェックを行うとともに,欠乏時には栄養方法の検討を行う必要がある.(共同研究者:千葉県こども病院代謝科 高柳正樹先生)

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