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新生児・乳児期に発症した心内膜線維弾性症の 2 例—病理組織診断の重要性
宮崎大学医学部小児科1),宮崎県立宮崎病院小児科2)
久保 尚美1),高木 純一1),近藤 恭平1),大塚 珠美1),小泉 博彦1),西口 俊裕2)

心内膜線維弾性症(EFE)はまれな疾患で,発生頻度は先天性心疾患の 1~2%と報告されている.近年さらに報告数は減少している.75%が 1 歳未満で高度心不全で発症し,抗心不全療法が行われるが予後は不良で,海外では移植対象疾患の一つである.今回重度の心不全症状で発症し,抗心不全療法に抵抗性で救命できず,病理組織にてEFEと診断された 2 例を経験した.【症例 1】18生日男児.在胎41週 3 日2,582gにて出生.生理的体重減少を認めず.16生日より哺乳力・尿量低下,不機嫌.近医にて,心機能低下を指摘され入院.心エコー上著明な左室収縮能の低下,僧帽弁逆流 3 度,左房拡大あり.冠動脈起始を含め心内構造正常.BNP値は3,450pg/mlと異常高値.劇症型心筋炎と考え,γグロブリン大量療法(IVIG),人工呼吸管理,多剤併用による抗心不全療法を開始.一時心不全症状は軽減し呼吸器より離脱したが,心機能は回復せず.再度心不全増悪を認め,入院61日目に永眠.病理組織にてEFEと診断.【症例 2】5 カ月女児.4 カ月健診にて体重増加も含め異常を指摘されず.37°C台の発熱・活動性の低下あり,近医受診.心機能低下を指摘され県立病院小児科入院.劇症型心筋炎を疑われ,PCPSの適応を含め当科紹介.心エコーにて著明な左室収縮能低下,僧帽弁逆流 2 度,左房拡大あり.冠動脈起始を含め心内構造正常.BNP値は > 2,000pg/mlと異常高値.なお 4 カ月時から500gの体重減少を認めた.劇症型心筋炎に伴う心不全を考慮し,IVIGならびに多剤併用による抗心不全療法を開始したが,治療の効果なく入院 5 日目永眠.病理組織にてEFEと診断.【考察】心内構造に異常のない新生児・乳児において,急激に発症する心不全を認めた場合,劇症型心筋炎が考えられる.しかし,治療効果が乏しい場合は,まれではあるがEFEである可能性がある.急激な発症で短期間に児を失ってしまったご家族に対し,説明,理解を得るうえでも病理組織診断の重要性を再認識した.

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