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心室性不整脈を契機に診断された新生児急性心筋炎の 2 例
山梨大学医学部小児科
戸田 孝子,角野 敏恵,杉山 剛,喜瀬 広亮,杉田 完爾,星合 美奈子

【背景】新生児心筋炎は予後不良といわれているが,初期症状は非特異的であり診断に苦慮することも多い.今回,心室性不整脈を契機に診断された心筋炎の 2 新生児例を報告する.【症例 1】在胎40週,母体感染兆候あり,帝王切開にて出生.出生後 2 日目より心室性期外収縮が出現,日齢 3 より非持続性心室頻拍あり,当科に紹介された.血液検査所見でCK 604IU/l,CK-MB 13.6ng/mlと上昇,トロポニンT陽性,心電図胸部左側誘導でT波の平坦化あり,また心エコー上左室中隔の軽度壁運動低下がみられたため急性心筋炎と診断された.日齢28よりγグロブリン400mg/kgを 5 日間投与され,その後徐々に心室性不整脈は消失し心収縮力も改善した.現在 3 歳 4 カ月で不整脈なく,心機能も正常である.【症例 2】在胎40週正常分娩で出生,母体感染兆候はなかった.出生前 4 日に初めて胎児不整脈を指摘され生後も不整脈続くため,日齢14日当科に紹介された.心電図上,心室性期外収縮(2 段脈),QT時間の延長,全誘導でのST上昇,胸部左側誘導でT波の平坦化がみられた.心エコーで壁運動は著明に低下しており(LVEF30%)特に中隔の壁運動が低下していた.血液検査所見ではWBC 17,360/γl(リンパ球10,420,単球1,220),CK 806IU/l,CK-MB 13.9ng/mlと上昇あり,急性心筋炎と診断された.入院翌日から非持続性心室頻拍が出現したため,γグロブリン200mg/kgを 3 日間投与された.投与後 1 週間くらいから心室性不整脈は徐々に減少し,心電図,心エコー,血液検査所見とも改善した.【まとめ】新生児期の心室性不整脈の原因の一つに急性心筋炎がある.新生児の急性心筋炎は劇症化,致死的不整脈を引き起こす可能性が高いため,新生児の心室性不整脈症例は高次医療が可能な施設での集中管理が必要である.今回の経験から新生児急性心筋炎に対しγグロブリン投与は有効であったと考えられたが,今後さらに適切な使用方法の検討が望まれる.

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