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著明な心不全症状で発見された褐色細胞腫による二次性心筋症の 2 例
九州厚生年金病院小児科1),心臓血管外科2),外科3),九州がんセンター小児科4)
熊本 愛子1),渡辺 まみ江1),熊本 崇1),山村 健一郎1),森鼻 栄治1),大野 拓郎1),城尾 邦隆1),井本 浩2),瀬瀬 顯2),能代 浩和3),永利 義久4)

褐色細胞腫は副腎髄質・傍神経節細胞に発生しカテコラミン産生能を有する腫瘍で,二次性心筋症を呈することがある.心不全症状で発症した 2 例を経験したので報告する.【症例 1:12歳男児】2~3 年前から著明な発汗,倦怠感がみられており,運動後に動悸,頭痛,嘔吐が出現し急性心筋炎を疑われ搬送された.来院時BP 140/102mmHg,多呼吸,顔面の浮腫と発汗,CTR 51%,著明な肺うっ血,EF 20%台,BNP 296pg/mlから二次性心筋症を考えた.強心・利尿剤,血管拡張剤により心機能は速やかに改善したが間欠的高血圧が持続.内分泌学的諸検査と各種画像で左後腹膜に6.5cmの多血性腫瘤を認め褐色細胞腫と診断.他院で2008年 1 月に原発巣摘出術を施行.【症例 2:24歳女性】PA IVS.4 回の体肺シャント術後13歳でTCPCに到達しEF50%台で経過.20歳以降外来受診は途絶えていた.1 年前から右胸痛,1 カ月前から著明な発汗と倦怠感がみられ,突然の胸背部痛で救急搬送された.来院時BP 185/96mmHg,多呼吸,上半身の著明な浮腫と発汗,CTR 60.8%,肺うっ血,EF 20%台,BNP 1,100pg/mlから原疾患による慢性心不全の増悪と考えた.抗心不全治療によりBNPは速やかに正常化したがEFは変化なくNYHA 4 度が持続し間欠的高血圧がみられた.右後腹膜の肝下面背側に4.5cmの多血性腫瘤が確認され褐色細胞腫と診断.Fontan循環下の低心機能でIVCへの浸潤も危惧されたため,人工心肺スタンバイ下に腫瘍を摘出.術直後の心機能の回復は悪く 4 カ月目から改善し術後 6 カ月のEFは60%台である.【結語】褐色細胞腫はカテコラミンの持続的な過剰分泌により心筋症を呈することがある.2 症例とも同様の治療を行ったが基礎疾患の有無によって心機能の回復経過は異なった.チアノーゼ性心疾患,Fontan術後例での合併は散見され関連が示唆される.頭痛,発汗過多,胸部圧迫感を主訴に間欠的高血圧,急性心不全を呈した場合,鑑別として本症は重要と考えられた.

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