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当院で経験した左冠動脈肺動脈起始 5 例の心電図変化
倉敷中央病院小児科
豊田 直樹,福島 雅子,柴田 敬,原 茂登,脇 研自,新垣 義夫,馬場 清

【背景】拡張型心筋症(DCM)に類似した左冠動脈肺動脈起始(ALCAPA)は,特徴的な心電図変化(左側誘導での異常q波,ST上昇・下降)が診断の助けになる.しかし,術後の心電図変化の報告は少ない.【対象と方法】対象は当院外来で経過観察中のALCAPA手術症例 5 例.おのおのにつき,年齢,手術時体重,合併奇形,手術法,僧帽弁閉鎖不全(MR)の程度,心エコーでのEF(%),心電図変化(1・aVL誘導におけるq波の深さ:0.3mV以上,V6誘導におけるJ点から80msecでのST偏位:0.2mV以上)を術前・術後で検討.【結果】経過観察期間は12~60カ月(中央値30カ月,以下同).手術時体重は 4~6.5kg(5.1kg),月齢は 1~10カ月(3 カ月),LVEF 14.0~69.9%(16.4%),男女比は 2:3.合併奇形はCoA・PDA・bicuspid AoVの低出生体重児 1 例.手術は左冠動脈移植術 3 例,竹内法 2 例で,僧帽弁形成術の施行例はなし.全例が生存し,僧帽弁閉鎖不全は軽度以下で経過.EF > 50%になるまでの期間は 0~12カ月(2 カ月).診断時の心電図所見は異常q波 4 例(1 誘導で-0.76~0mV;-0.40mV,aVL誘導で-1.24~0mV;-1.0mV),ST-T変化 5 例(-0.22~0.07mV;-0.03mV).術後 3 カ月以内にST偏位は消失.術後 1 年の心電図で異常q波が残存していた 1 例(aVL誘導で-0.57mV)は,月齢10で手術を行った症例であった.【考察】ALCAPAの術後経過は総じて良好.心不全を呈したALCAPAでは 1・aVL誘導での異常q波やV6誘導でのST偏位が高率に認められ,診断の一助となる.収縮力の改善と前後して異常q波が 4 例中 3 例で消失した.10カ月の最年長例では異常q波が残存し,心筋障害という観点からは早期発見・早期治療が望まれる疾患である.

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