P-41
心筋炎:劇症化の予測—LVEDD×EF値の有用性
広島市民病院小児循環器科1),心臓血管外科2)
鎌田 政博1),中川 直美1),木口 久子1),久持 邦和2)

【対象】対象は過去 9 年間に経験した心筋炎 6 例中,心奇形合併例を除く 4 例(5 件).年齢(中央値)9.2歳,体重22kgで,心筋炎反復 1 例,原因ウイルス判明 2 例,PCPS導入 2 例であった.【方法】これら 4 例(5 件)を,劇症化群 2 件と,非劇症化群 3 件に大別,臨床症状,理学的所見,胸部X線像(Xp), ECG, UCG所見について比較,劇症化を予測できないか検討した.【結果】年齢,体重,初診病日:両群間に差はなかった.入院時理学所見:劇症化群で四肢冷感,浮腫が強かったが,意識,顔色,心拍数,血圧などに明らかな差はなかった.しかし,非劇症化群が心筋炎として紹介された一方で,劇症化群は嘔気・嘔吐を主訴に胃腸炎として紹介されていた.血液検査:Tp-T,BNP値,ほかに差を認めなかった.入院時胸部X線:CTR,肺のうっ血像に一定の傾向はなかった.ECG:劇症化例では肢誘導のみならず,左胸部誘導でも低電位であった.入院時UCG所見;左室拡張末期径(LVEDD):非劇症化群では正常~拡大傾向,劇症化群では正常~やや縮小していた.LV駆出率EF:非劇症化群 1 例,劇症化群 2 例で低値であった.LV拡張能:劇症化群ではDT,TEI indexともに拡張障害を示唆,心筋肥厚の関与が考えられた.LV収縮能,拡張能ともに急激に低下,EF低下にもかかわらず肥厚したLVが代償性に拡張できないのが劇症型心筋炎と考え,LVEDD(%予測値)×EF(%)値を比較したところ,非劇症化群 ≧ 4,600,劇症化群 ≦ 3,200であった(正常 ≧ 6,000).UCG所見の経時変化:非劇症化例ではLVEDDの縮小とともにEFは改善したが,劇症化群ではLVEDD,EFともに低下した.【結語】ECG左胸部誘導で低電位を示す症例,LVの収縮・拡張能が急激に低下する症例では,劇症化に注意する必要があり,LVEDD×EF値はその予測に有用と考えられた.

閉じる