P-42
ノロウイルス(GII/4)によると考えられる心筋炎を合併した急性脳症の 1 例
社会保険紀南病院小児科1),和歌山県立医科大学小児科2)
南 孝臣1),浜 武継1),渋田 昌一2),武内 崇2),鈴木 啓之2),末永 智浩2),吉川 徳茂2)

【はじめに】ノロウイルスは,感染性胃腸炎の原因となる 1 本鎖RNAウイルスであるが,検索した範囲において,心筋炎を発症した報告はない.今回,ノロウイルスによると考えられる心筋炎を合併した急性脳症の 1 症例を経験したので報告する.【症例】2 歳,男児.40°Cの発熱と下痢を主訴に当科救急受診.待合いで間代性痙攣を発症したため精査加療目的で入院した.入院時血液検査で,CK-MB 25IU/lと正常,LDH 376IU/l,トロポニン I(TnI)0.72ng/ml(正常値 < 0.05)と軽度高値であった.入院12時間後には,CK-MB 49IU/l,LDH 918IU/l,TnI 27.0 ng/ml,BNP 380pg/mlまで上昇し,心エコー上,EF 53%,左房・左室の拡大と中隔・左室後壁の収縮能低下を認めた.胸部X線でCTR 47.5%,心電図はHR 123/分,有意なST変化はなかった.痙攣も反復しており,急性脳症に合併した心筋炎と診断し,メチルプレドニゾロン30mg/kg×3 日,γグロブリン 1g/kg,DOB 2γ + hANP 0.05γの投与を開始した.入院25時間後の心電図では,II,III,aVF,V3-6で0.15~0.2mVのST低下を認めた.入院 3 日目から,心機能は改善傾向で,TnIは入院22時間の36.5ng/ml,BNPは入院 6 日目の1,233pg/mlをピークに低下していった.DOB最大 3γ,hANP最大0.2γまで増量したが,入院11と12日目に中止した.入院時の便のPCRでノロウイルス(GII/4)が検出された.便中ロタ,アデノウイルス抗原,鼻腔インフルエンザ抗原は陰性で,髄液からウイルスは分離されなかった.結果として脳症後遺症は残ったが,心機能は正常である.【まとめ】ノロウイルス(GII/4)が原因と考えられる心筋炎を初めて報告した.また,心筋炎の評価には,TnIとBNPが有用であった.今後は,ノロウイルス感染症においても心筋炎の可能性を考慮する必要があると考えられた.

閉じる