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拘束型血行動態による肺高血圧を合併した心筋緻密化障害の幼児例
弘前大学医学部小児科1),保健学科2)
北川 陽介1),今野 友貴1),上田 知実1),佐藤 工1),高橋 徹1),米坂 勧2)

【はじめに】心筋緻密化障害は,胎児心筋が緻密な心筋構造になる過程が障害され,スポンジ状の心筋が遺残することによる,心室壁の過剰な肉柱形成と深い間隙を形態的特徴とする疾患で,高率に家族例が認められ,X連鎖性,優性遺伝形式のほか,さまざまな遺伝的多様性があることが明らかとなっている.今回,幼児期に拘束型血行動態を呈し,肺高血圧による失神発作を契機に診断された症例を経験した.【症例】1 歳 5 カ月男児.健診等で特に異常を指摘されず,心不全および失神にて発症した.心エコー上,両心室の心尖部を中心に網目状の肉柱形成があり,両心房の拡大,中等度三尖弁閉鎖不全,肺高血圧を認めた.心臓カテーテル検査上,肺動脈圧61/29(42)mmHg,左室拡張末期圧37mmHg,平均肺動脈楔入圧35mmHg.血漿BNP濃度2,781pg/ml.その時点で家族歴に心筋症はなかった.抗心不全療法(利尿剤,ACE阻害剤,carvedilol),抗血栓療法にて失神は減少し,その後状態は比較的安定していたが,感染を契機に心不全が増悪し,2 歳 0 カ月時に死亡した.本症例 1 歳 9 カ月時に妹が出生した.出生時症状は認めなかったが,家族歴より心エコーを行い,心筋緻密化障害と診断された.現時点で肺高血圧は認めていない.【考察】兄の失神の原因として,不整脈,塞栓症は否定的で,心筋拡張障害による肺静脈性肺高血圧と推察された.心筋緻密化障害で拘束型病態を呈する症例は,おもに思春期から成人期でみられ,乳幼児ではまれとされる.本症例は肺高血圧を合併した重症例であり,心臓移植適応例と考えられた.また,家族歴から,妹は出生早期の無症状期に診断された.今後兄と同様の経過をとることも危惧され,慎重に経過観察する予定である.現在,遺伝子解析についても検討中である.

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