P-44
ミトコンドリア心筋症の 3 例
九州大学医学部小児科
金谷 能明,山脇 かおり,山口 賢一郎,池田 和幸,宗内 淳

【背景】ミトコンドリアDNA(mtDNA)あるいは核DNAの変異に基づくミトコンドリア病の多くは呼吸鎖酵素異常を伴うが,特に心筋症の病態を呈する場合,ミトコンドリア心筋症と称し患者の生命予後を左右する.今回ミトコンドリア心筋症 3 例を経験したので報告する.【症例】〈症例 1〉5 歳時に脳卒中様発作を機にミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様症候群と診断(mtDNA 3243A > G変異).7 歳時の心エコーで左心室の拡大(LVDd 42mm:127%N),心収縮力の低下(EF 47%)を認め拡張型心筋症様の病態を呈するようになった.増悪と改善を繰り返しながら徐々に心不全は進行し11歳で死亡した.〈症例 2〉眼瞼下垂,糖尿病を認め 5 歳時に慢性進行性外眼筋麻痺症候群と診断(mtDNA単一欠失).8 歳時より完全左脚ブロック,心収縮力の低下(EF 47%)を認め,9 歳時には完全房室ブロック(HR 20/分,wide QRS)によるショックを呈し永久ペースメーカ植込みを実施した.その後も拡張型心筋症様の病態は進行し13歳で死亡した.〈症例 3〉早産・極低出生体重児のため前医NICUに入院.経過良好で日齢68に退院したが日齢71より哺乳力低下,日齢72にショック状態で当院ICUに入院となった.入院時心拡大(CTR 70%)を認め,心エコーでは心室筋は著しく肥厚(左室後壁/心室中隔7/7mm)し,全周性に多量の心嚢液を認めた.心嚢穿刺,内科的治療により循環は安定したが高度の乳酸アシドーシスが遷延し,各種代謝異常症が否定されたためミトコンドリア病が疑われた.しかしながら治療に対する反応は乏しく,心不全増悪により日齢94に死亡した.【結語】ミトコンドリア心筋症は発症後の進行が急速であり予後不良であった.現時点での根本的治療法はなく今後の有望な治療法の開発が期待される.

閉じる