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小児好酸球性心筋炎の 1 例
慶應義塾大学医学部小児科
古道 一樹,前田 潤,山岸 敬幸

【緒言】好酸球性心筋炎はまれな疾患であり,その病態には不明な点が多い.成人では,末梢血好酸球が増多し,急激な組織壊死を伴って死に至る症例が報告され,病態と血中好酸球カチオン性蛋白(ECP)等の好酸球顆粒との関連が推測されている.心筋への好酸球の浸潤が組織障害を引き起こすため,ステロイド治療の必要性と有効性を示す報告が散見される.小児における好酸球性心筋炎の報告は非常に少なく,自然歴および治療の必要性と有効性は明らかでない.【症例】5 歳男児.入院 1 週間前より軽度の上気道炎症状で発症,外来受診時発熱,活動性低下,頻脈を認め,胸部X線でCTR拡大(55%)と胸水貯留を伴った.末梢血好酸球は増加(1,940/μl)していた.心エコーで左室駆出率は正常だったが(62.5%),左室壁の肥厚と心嚢液貯留があり,入院のうえ,利尿剤,ACE阻害剤が開始された.入院後解熱し,頻脈は改善し,心エコー所見も入院 2 週間後に正常化したが,臨床所見の改善に遅れて好酸球数の急激な増加(最高値14,390/μl),ECPの著明な上昇(> 150μg/l)がみられた.入院 4 週間後の血液検査でも好酸球数(1,365/μl),ECP(48.5μg/l)ともに高値が持続したため,好酸球浸潤による潜在的な心筋障害が進行する危険性を考え,十分にインフォームドコンセントを得たうえで,入院 5 週間後にプレドニゾロン内服(2mg/kg/day)を開始した.ステロイド治療に対する反応性は良好で,治療開始 3 日後に末梢血中より好酸球は消失し,ECPも正常化した.現在プレドニゾロン漸減中で,再燃を認めていない.【結語】臨床所見,心エコー所見は良好に改善したが,その後末梢血好酸球数およびECP異常高値が遷延した好酸球性心筋炎の小児例を経験した.本症例では潜在性心筋障害を予防するために,ステロイド治療が有効であると考えられた.

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