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乳児期早期に発見されたエプスタイン奇形を合併した心筋緻密化障害の 1 例
自治医科大学小児科
平久保 由香,白石 裕比湖,森本 康子,保科 優,桃井 真里子

【症例】2 カ月男児.【主訴】心雑音.【家族歴】心疾患なし.1 歳の姉は心エコー未検.【現病歴】在胎38週 4 日,3,104gで出生.出生直後や 1 カ月健診では心雑音なく,体重増加良好.哺乳力低下もなし.2 カ月健診で心雑音と体重増加不良を指摘され,当院紹介受診.【現症】体重5,065g,脈拍150/min,呼吸数52/min,血圧70/40mmHg,SpO2 100%.特異的顔貌なし.活気はあるが,発汗著明で肩呼吸,陥没呼吸と末梢冷感あり.第 2 肋間胸骨左縁にLevine 1/6 の収縮期雑音聴取,肝を 3cm触知.【検査所見】血液検査:異常なし.胸部X線写真:心胸郭比69%,肺うっ血なし.心電図:δ波あり,単原性の心室性期外収縮が散発し,V4~6でST低下を認めた.心エコー:心尖部から左室後壁にかけて網目状の肉柱形成と深い間隙を認め,左室拡張末期径34mmと拡大,左室駆出率 8%と著明に低下.三尖弁の落ち込みと中等度の三尖弁閉鎖不全.径2mmの卵円孔開存.冠動脈異常なし.【経過】エプスタイン奇形を合併した心筋緻密化障害と診断.水分制限,利尿薬静注とACE阻害薬内服を開始した.強心薬静注は使用せずに循環動態は比較的安定.その後,利尿薬は内服に変更し,入院後 1 週間で心胸郭比60%,左室駆出率13%と改善傾向である.【考察】初診時に著明な心拡大と心機能低下を認めた.エプスタイン奇形のみが原因とは考えにくく,心エコーの左室壁所見から心筋緻密化障害による重症心不全と判断した.心筋緻密化障害の乳児例では重篤な経過をたどる症例もあり,今後の注意深い経過観察が必要と考えられる.

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