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小児体外循環症例におけるcarperitide(HANP)のサイトカインに対する効果の検討
東京慈恵会医科大学心臓外科
宇野 吉雅,森田 紀代造,橋本 和弘,川田 典靖,山城 理仁,香川 洋

【目的】小児体外循環においては種々のサイトカインが活性化され,その炎症性反応として惹起され得るPH crisisやSIRSなどの合併症をいかに回避・抑制するかが重要である.これまでさまざまな薬剤の効果が検討されているが,近年carperitide(HANP)についてもサイトカインや再灌流障害に対する効果が示唆されている.そこで今回,体外循環中に使用したcarperitide(HANP)のサイトカインに対する効果を検討した.【方法】対象は2005年 7 月~2006年12月に当施設において手術を行ったVSD + PH症例.体外循環中のHANP投与群(n = 6)と非投与群(n = 12)について,体外循環終了時に各種サイトカイン(IL-6,IL-8,TNF-α,elastase,endothelin)の血中濃度を測定し,測定値と体外循環時間の関係について比較・検討を行った.また両群間においてCPK,トロポニンT値および術後挿管時間とA-aDo2を比較し,臨床的効果についても検討を行った.【結果】対象症例中に死亡あるいは重篤な合併症なし.両群間において術後挿管時間,A-aDo2には有意差はなく,呼吸機能に対する効果は確認できなかった.また測定した項目のうちCPK,トロポニンT,TNF-α,elastase,endothelinでは両群ともに体外循環時間に応じた上昇が術後に認められ,有意差は認められなかったが,これに対しIL-6,IL-8ではHANP投与群において体外循環時間による上昇値が非投与群に対して低値を示す傾向を認めた.【結語】今回の結果よりHANPの体外循環時間によるIL-6,IL-8の上昇抑制効果が示唆された.明らかな臨床的効果は確認できなかったが,重症例や長時間体外循環症例においてサイトカイン活性や再灌流障害に対する効果が期待でき,さらなる検討が重要と考えられた.

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