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本邦における肺血流増加型先天性心疾患に対する低酸素濃度ガス吸入療法の実態—厚生労働省成育医療研究委託事業アンケート調査
国立循環器病センター小児循環器診療部1),北野病院小児循環器部門2),えちごクリニック3)
吉敷 香菜子1),黒嵜 健一1),平田 拓也1),渡辺 健2),越後 茂之3)

【目的】近年,肺血流増加型先天性心疾患に対する低酸素濃度ガス吸入療法(N2療法)が臨床導入されてきているが,本邦での施行実態に関する調査検討はない.今回,成育医療研究委託事業「肺血流量増加型先天性心疾患に対する低酸素濃度ガス吸入療法の効果と安全性に関する基礎的・臨床的研究」班で,施行実態を調査検討したので報告する.【方法】小児循環器学会評議員の所属する各施設および大学病院232施設にアンケートを郵送,回答が得られた158施設のうち,N2療法施行経験のある55施設のデータを分析検討した.【結果】経験数は10症例以上が23施設(42%)であった.低酸素濃度ガスの作成は,33施設(60%)で空気流回路の途中に純窒素ガスを接続し混合,専用ブレンダー使用は 7 施設(12%)であった.窒素供給源は,窒素ガスボンベが38施設(69%),壁配管は 3 施設(5%).投与方法は人工呼吸器が51施設(93%),このうち調節呼吸は35施設,自発呼吸容認は27施設.ヘッドボックスは32施設(58%),鼻カニューラは20施設(36%)であった.酸素濃度測定には47施設(85%)で医療用濃度計を使用.吸入酸素濃度調節の最重視基準はSpO2が最も多く41(75%)施設であった.N2療法について施設の倫理委員会承諾を得ていたのは24施設(44%),患者からの承諾書を得ている施設は36施設(65%)であった.インシデントは10施設で経験,窒素ボンベや呼吸器などの医療機器故障,N2療法に起因する低酸素血症などであった.【まとめ】N2療法は本邦においても多施設で効果的に施行されているが,その方法は各施設の経験に基づきさまざまであり,インシデントの発生も認められた.より安全確実な施行方法の検討,施行基準作成の必要性が示唆された.

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